ユキちゃんと初めて会ったのは、今から3年くらい前のあるイベントでだったと思う。私はその頃とあるメーカーに勤めていたんだけど、その数ヵ月後に会社をやめ、それきりユキちゃんと会うこともなくカナダに渡った。99年の4月だった。
バンクーバーの繁華街にあるカフェに仕事が決まり、ドキドキしながら初めてフロアに立った日。その人は、ショーケースの中のデザートを一生懸命見ていて、私はなにげなく見たその人のTシャツがセッションズだったのに気づき、「スノーボーダーなんだ」とぼんやり思っていた、その瞬間、その人が顔を上げた。ユキちゃんだった。
その再会を機に、ユキちゃんは私の良き相談相手になってくれたり、時にはデザート仲間だったり、一緒に仕事したり……会うたび、話すたびにいつも刺激を与えてくれて、その奥の深さを感じさせられる、とってもドープな存在となっている。
あの時、遠く離れた異国の地で、あの偶然の再会がなければ、私はこうしてインタビューをすることもなかったのかな、と思うと、人生ってすごく不思議だなって思わずにいられない。私の知ってるユキちゃんは、皆の知ってる、あるいは想像してる金田由貴子と一緒かな?
ー1月に怪我した腰の具合はどう?
もう、バッチリ。1ヶ月で回復して、全部で5週間くらいでスノーボード復帰って感じで。
ーそれにしても腰の骨を3本も折って、5週間でスノーボード復帰ってちょっとすごい。
運が良かったというか……筋肉とか、神経とかに全然影響のないところだったから、大丈夫なんだけど、骨はくっつかずに離れたままになってるんだって。
ーへえ~…… 怪我したときの状況は、どんな感じ?
長野でローカルの人たちと一緒にパウダーを滑っていたときに、ツリーの間にレインボーログがあって、ちょっといってみたらひっかかって、落ちたところにそのログの枝が出ていて、パウダーに落ちたと思ったらその枝にガンってあたっちゃったと。
ーうう~、痛そう。
そんなわけで、背骨の横に出ている凹凸筋っていうちっちゃな骨の先が3本かけて、どこかにいっちゃってるみたい。
ーどこかって?
う~ん、なんか移動してるみたいで(笑)。でも神経とかに影響のないところだから、そのままおいとかれちゃってる(笑)。
ー普通の人だったら、5週間でスノーボードに復帰なんて、絶対無理だろうなあ。やっぱり相当鍛えてないと。
痛い目には何回もあってるし、今回はお医者さんや信頼してる治療院の先生に、言われた通りに休んで、言われた通りにメニューをこなして、治療をきちんとしてたのが良かったみたい。素直におとなしく言うこと聞いてたのが(笑)。
ー今回は、SBNを見てる人たちからたくさんユキちゃんに是非聞いてきて欲しいという質問があるんだけど……なにかおもしろい質問は見つけた?
う~ん、やっぱ女の子の聞きたいことってひとつだねえ(笑)。
ーいきなりそっちの質問にいっちゃう?
あ、じゃあこっちの、これから何かをしたいんだけどっていう質問もけっこう多いから、こちらから。
ーライディングに関してもちょっとステップアップしたいんだけどっていう声がけっこうあるね。ガンガンいきたいけど年が気になっちゃうとか、怖さが先にたっちゃうって女の子たちへアドバイスがあれば。
私、年とか考えてみれば、周りにいる人たちってもっといってる人も多くて、プロだからっていうのもあるかもしれないけど、35歳くらいから始めてる人だっているし、私はおばあちゃんになるまでスノーボードしたいって思ってるし、年なんかじゃなくてやりたければやればいいと思う。やりたいタイミングって自分でしか分からないものだからね。次のステップにいきたいけど、怖いという気持ちが先に立っちゃうっていう人に関しては……たぶん、初心者の人でも上手な人でも、「怖い」とか、「できるかな」って気持ちは同じだと思う。
大事なのは、今の自分がどこまでできてて、その次に何にチャレンジできるのかっていうのがわかっているかどうか、だと思う。「こんな風になりたい」っていう目標があったとしたら、「今はこういうことができる」「その次はこういうことをしよう」ってステップをひとつずつクリアしていけば、自然とそこにたどりつくことができるから、自分ができることからどんどんやってったらいい。後は、同じくらいのレベルの人と滑りに行って、お互いプッシュしながら、楽しみながらやっていくと上手になると思う。自分1人なら「どうしようかな」って迷うことも友達となら「やってみようかな」って気持ちになれる。
ー「ユキちゃんのダイナミックなスタイルのファンです」という声もあるんだけど、私もこないだ初めて一緒にフリーラン滑ったときにけっこう「うひゃ~、かっこいい」って、なんかいい意味で男の子っぽい、スタイリッシュな滑りに感動しちゃって、ああいうユキちゃんの滑りっていうのは、もともと「こんな風になりたい」っていう気持ちがあったのか、それとも自然に身についていったのかなあ?
あのウィスラーのね、「そのグラブでそっちにはひねれへんやろ?」みたいな(笑)……最初は、全く「こんな風になりたい」っていうのはなくて、ただ「もうちょっと上手く滑れるやろ」とか「もうちょっと高く飛べるかも」とかそういうことしか考えてなかった。ずっとずうっと。で、ある程度できるようになったときに、「じゃ、それをこういう風にしたらかっこいいかな」とか思うようになって、人の滑りを見たりしながら、そういうのでどんどん変わってきて、今のスタイルがあるのかな。またこれから、変わるかもしれないし。
ーもう大会には出ないのっていう声もあるけど……
大会はね、ほんとは今年出ようと思ってたんだけど、怪我しちゃったから2月、3月はそういう場には行けなかった。もうちょっと練習して出てみようかな、とか(笑)。意欲はあるんだけど。ワンメイクの大会とかあったら出たいなあって思ってる。
ー最近はどこでよく滑ってるの?
国内だったら新潟近辺が多いかな、やっぱり。それか北海道とか。海外だったら、多いというか、毎年必ず行ってるのはカナダのウィスラー。シーズン頭とシーズン終わりに、行くようになってきた。
ーウィスラーってユキちゃんのお気に入りのエリアなんだよね。
うん、山も好きだし、街も好きだし、そこにいる人たちも好き。なんか、そこにいるだけで気持ちいいっていうか。
ー一昨年の冬くらいには1人で行ったんでしょう?
そう、1人で行くと、どうしても自分以外の人としゃべらなければいけないでしょう?だから、本当にいろんな人と出会えたし、いろんな人と話をすることで、「ああ、今まですごく小さな殻の中でやってたんだな」っていう気がして。たまたまその時に出会った人たちがすごくいい人たちばかりで、また毎年行きたいなって気持ちにもなったし、得るものはたくさんあったなって。
ー自分の経験からすると、1人で行くことはお勧めかな?
うん、安全なところだったら1人でいくことはお勧めだと思う。もし不安だったら最初はパックとか、ツアーとかで申し込んだり、友達とちょっと下見って感じで行ったりしてもいい。毎年春とシーズン前に私もウィスラーでキャンプをやってるから、それに参加してもらっちゃってもいいし、宣伝になっちゃうけど(笑)。でも、うん、上手くなれると思う。
ー私も第1回目のキャンプをのぞかせてもらったんだけど、ユキちゃんとあっちゃんの熱心なコーチング姿にキャンパーから「鳥肌が立った」って声もあがったりして。
それ気持ち悪いとかじゃないん(笑)?
そうそう怖くて悪寒が(笑)。なんちゃって、うそうそ、でも参加してた皆楽しんで、上手になって帰ってったと思った。
人数は、決まった人数以上とらないことにしてるから、徹底的に少人数制で、1人1人にいきとどくコーチングをしたいからって希望を出して。皆にはそれぞれで何かを得てもらえるような環境を作ってやってるつもり。もし、その気があったら必ず上達できると思う。自分がこれまで教えてもらってきたこと、教えてきたこと、いろんな環境でやってきたことを生かせたらなって思って。今の道具とか環境ってすごく良くなってきていて、これからのスノーボーダーってもっともっと上手くなっていくと思う。だから、もし私が今感じていることや伝えたいことが早くわかってもらえたら、もっとステップアップしてもらえるんじゃないかなって思って。もしそういう場が必要だったらこういうのがあるから来てくださいって感じ。他にもいろいろなキャンプでコーチとかやらしてもらってるけど、もちろんやっぱり何かを得て、上手くなって帰ってほしいからどんなキャンプでも私の教え方は一緒でそのときそのとき一生懸命でやってます。私もキャンパーから得ているものってたくさんあるし……
ーうんうん……では次はちょっとプライベートなことについて知りたいという意見が多いので、まずは好きな食べ物から聞いてみようかな。
(目を輝かせて)好きな食べ物ねえ! いやあ~、ちょっと一言では言い表せないんだけど、最近食べてないのはプリン。食べてないなあ~(懐かしそうな目をしながら)。甘いものは好きなんだけど、量より質タイプ。
ー「スキー場で見かけたら声をかけてもいいですか? 無視されたりしませんか」だって。
うん、声かけてください。よくあるのが、遠巻きに向こうから見て指差してる人とかいるんだけど、それが一番どうしていいのかわからへんから(笑)。逆に声かけてもらったほうが、いいなあ。。
ー「自分を動物に例えると?」ってさっきから気にしてる質問みたいだけど。
それね、最近何やろ? 何だと思う?
けっこう小動物系?
よく、猫みたい、とか言われたりとかするけど、なんか、性格とかいい加減で、興味ないときには無視とかしてるし、ご飯のときだけなついたり(笑)。
ー目標ってある?
理想を言えばきりがないんだけど、私は長く続けていきたいなって、おばあちゃんになるまで滑りたいって気持ちがあるから、そのために今、環境だとか、施設だとかに働きかけたりとか、安全な道具を見つけ出したり、安全な滑り方を皆にも伝えていったりとか、長く皆が楽しめるようになってったらいいなって思う。
ーSBNを見てる皆へのメッセージは?
皆と一緒に滑りたいし、今の環境の中で長く続けていって欲しいなって。