Self-Introduction : 桑野智和 コラムVol.1

Self-Introduction : 桑野智和 コラムVol.1

こんにちは、写真家の桑野です。

5月よりコラムを書かせてもらう事となりました。ご存知の方は少ないと思いますので簡単に自己紹介をさせて頂きます。

私はスノーボード写真家活動を15年間続けております。数年前、思い切って雪山の近くに移住しました。ビルやデパートは1時間圏内に無くて、反対に20近くのゲレンデが近くにあります。他にも尾瀬の登山ガイド業、本州No1透明度の菅沼でカヌーツアーを経営しています。

街の不条理なリズムから、自然に寄り沿うリズムに切り替えた事でたくさんの「気づき」「エネルギー」が得られて充実の毎日です。その中で、スノーボード写真家としての内面も変化がありました。

第一回はその辺の事を書いていこうと思います。

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いつも遊び心の絶えない尾瀬戸倉ローカル TAZ & TAKUMI @Snowpark ozetokura

 

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山パウダーボードでこのエア!山岳域に活動の場を広げても、昔の勘は鈍っていない。 Kensuke numano @ Snowpark ozetokura

私がスノーボードと出会ったのは19歳の時。人より少し遅めでした。

それまでスキー場も未経験、吹雪の岩原スキー場で友達と木の葉落としを競いあってました。これはハマるな!と感じてそのまま神田ボード街で3シーズンアルバイト。東北籠り&大学卒業を機に「俺はスノーボードカメラマンになるんだ!」と無謀な志を立てて現在に至ります。雑誌を読んでいて、ライダーではなくてカメラマンになりたかったあたりが変わり者だったなぁと今更ながら思います。

はじめは、何も、誰も、ツテが無かったので電話帳で北から順にスキー場に電話したり、上手い人がいると噂が絶えない尾瀬戸倉スキー場に籠ってみました。そこで若きバートンライダー石橋一、龍美栄一(SURGE)沼野健補(GENTEMSTICK)に出会いました。時同じくしてカメラマンを探していた彼らと出会いが、飛躍的に僕の世界を広げてくれました。

当時はハーフパイプが世界的主流。彼らは冬期に戸倉のパイプ、夏期はスイスの氷河でトレーニングをしていました。標高3300mにあるパイプの周りでは、英語、ドイツ語、イタリア語、フランス語、日本語、韓国語が飛び交い活気に満ちあふれていました。

ところでサマーキャンプというと米国のMt.フッドやカナダのグレイシャーキャンプなどが有名ですね。しかし私は未だに行った事がありません。その一番大きい理由は、人と同じ道を後ろから付いていってるだけでは道は拓けない。撮る人が少ない西欧へ行った方がチャンスはあると考えたからです。加えて、幼少期に親の仕事でヨーロッパで暮らしたり旅して馴染みがあったのが大きいです。

そんな訳で真夏の氷河を滑る仲間や、アメリカとは違ったポーク(刺す)スタイルの有名ヨーロッパライダーを撮り続けました。ニコラスミューラー、フレデリックカルバーマッテン、ギギなどとは生活を共にし楽しい撮影をさせてくれ、来日時には僕の実家で家族ぐるみの付き合いにまで進展。日本には馴染みの無いアルプスや北欧の写真をたくさん露出出来たと思います。

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爽やかな顔をして、恐ろしいほどの嗅覚とスタイルを併せ持っていたニコラスミューラー@Niseko BC

 

その後はビックイベント巡りに拍車がかかりました。オリンピックへ繋がる『FISワールドカップHP』を追いかけ国境越えのヒッチハイク、世界最大級パーク『SPC55』に長居する為にスタッフフォトグラファー係を急遽作ってもらったり。世界最大のショーイベント『X-games』で本場アメリカのど迫力に打ちのめされ、テリエ主宰『Arctic Challenge』やインゲマーバックマン主宰『the battle』で業界のメインストリームを創りだしていく現場の情熱を感じさせて頂きました。

世界的有名ライダーを撮ること自体は日本に居ても可能ですが、例えば母国ノルウェーでのリラックスしたテリエを撮れたり、世界最高ジャンプを記録したインゲマーとともに過ごしたリクスグランセンでのオーロラの夜。写真を仕事にしていなければあり得ない貴重な場面でした。

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Terje  @arctic challenge TRYSIL NORWAY   本場のテリエはいつもより数倍かっこ良く見えた。

 

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Kazuhiro Kokubo @ aspen X-games 海外のキッズにサインを求められるカズ。日本で知られていない現実をもっと伝えていきたい。

 

世界を知って再び日本国内へ目を向けると、新しい視点が僕には生まれていました。

ニセコが誇る雪質。白馬の圧倒的な山容。八甲田や蔵王の樹氷。都心から至近距離のエクストリーム谷川岳。活火山、独立峰、連峰、高峰、里山。日本は国土の7割が山岳地帯。そして四方を海に囲まれたパウダー量産国家。なぜ海外ばかりに目が行ってたのでしょうか?

今までは街で言えばニューヨーク、ロンドン、パリ、ローマなどに憧れていましたがトウキョウも世界的にものすごい都市だと気づきました。同様に、フッドやアルプスばかりに目が行ってましたが、自分は国内の雪山を知ってるのか、滑ったのたのか?

海外の仲間が自国の雪山を誇らしげに語るように、私も自国の雪山を誇りに思いたいし、聞かれた時には詳しく語れるようになりたくなりました。以来、ここ数年は海外に行かずに日本を掘り下げる活動をしています。その土地に入り、天候や雪質を調べて、名物や温泉を堪能し、the dayには完璧にその土地に一体化してテーマに取り組む。それが今の活動です。

そのなかでも特に関心を持って取り組んでいるテーマ。

それは、自然の山々を滑り降りながら自分のスタイルで地形遊びを織り交ぜていける人。。。を撮るということ。。。。

現在、自然の山を美しいフォールラインで落とすジャンルは、諸先輩方のご尽力で確立されてきています。また、パークでのジャンプは回転数とサイズが限界近くまで進化していると思いますし、あんまりやり過ぎの回転数は写真家として魅力を感じていません。一方で、このジャンルにはまだ可能性があると思うんです。だから意欲も湧くし、厳しい環境でも足繁く通えるのだと思います。

私はパーク天国尾瀬戸倉でインスピレーションを貰い、世界レベルも追ってみました。その上で取り組みたいこと = 将来のスノーボーディングを撮り続けていきたい。ギアや人の限界が上がった時に、目の前にある手つかずの雪山を今まで見たことも無いクリエイティブなラインで降りてくる人を撮ってみたい。山との「調和と攻略」のバランスを通じて滑り手のすごさやオリジナリティを表現する。その気持ちが今、一番強いです。そして「スノーボードかっこいい!楽しい!」って写真を通じて感じてもらい、本当のスノーボーディングを知って続けてもらえたら、人生が楽しくなるんじゃないかな?と願っています。僕がそうだったように。。。

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Hayato Toya & Taz’s line @ Mt.Hotaka

 

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Nakao a.k.a. MASAI @Mt.Tanigawa

 

いかがでしょうか?

普段あまり裏方さんの話なんて聞くことが無いと思いますが、こういうスノーボーディングワールドもあるんですよ!これからもカウンターカルチャー的な僕のコラムをよろしくお願いします。

  桑野 智和

・写真家

・BLUEBIRDカヌー/代表

・(社)片品山岳ガイド協会

・(社)尾瀬ガイド協会/認定ガイド

・(NPO)自然体験活動推進協議会/指導者

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