Road Trip in New Zealand

OPEN ARMS (腕を広げて、感じてこよう!)
ROAD TRIP in NEW ZEALAND    Text by Motoki Ushiyama

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The Opening

人間とは贅沢なものでシーズン中あれだけいい雪を毎日滑ったのに、時間が経つと雪山への欲求は高まり次の雪を求めている。
それはそうと、この夏もタップリと潮水につかりSurfingした。
夏は夏のことをしようと雪を追いかけない、そんな生活を楽しんできたこの10数年だけれど、夏の終わりに久しぶりに冬を追いかけることを決めて、まだハイシーズンのNZへ旅に出ようと思う。
俺にとって以前のNZでは成果を求められるトレーニングの場所であったり、撮影ではコストをかけてヘリで氷河に飛ぶかわりに映像を残さなければならない・・・みたいにある意味限定的なものが多かったから、あんまりゲレンデで自由に滑った記憶がないんだよね。

今回の旅でも撮影やボードのテストもあるけれども、気分的に最初から昔のようにガツガツしないで、久しぶりにのんびり景色でも見ながら冬の風を味わい楽しんでこようと思う。
 信州からオーストラリアを経由して、9500㎞南のNew Zealandへ。
気が付けば10数年振りのKiwi Styleに、俺は懐かしい仲間に会うかのように久しぶりにワクワクしているよ。

1st Day

夏の終わりの8月末、少し肌寒くなってきた信州を出て成田空港に向かう。
持っていく荷物はパンパンのボードケース1つ。重たいケースを空港でピックアップしてカンタスのカウンターに行く。最近はキャリーする荷物のオーバーチャージがうるさくなっているというが、ボードケースの中身のボード4本と本数冊が重さを更に加算させている。なんか言われるかと思ったけれど、ワンワールドグループのステイタスに助けられて問題なくチェックイン完了だ。
飛行機に乗り込んで、定刻20:30に成田を飛び立ち機内で食事をして・・・
そう、ぐっすり眠って起きたらシドニー到着の2時間前。夜発で時差が少ないのは本当に助かる。シドニーでトランスファーしてニュージーランドはQueenstownへ向かった。
西の海からアプローチした飛行機が高度を下げてくると、窓の下には懐かしいNZらしい光景が午後早い時間の光の中に広がっている。
山頂の南斜面に光る雪。その下に広がる緑の草原。その間を繋ぐのは氷河が削り出した深く複雑に入り組む谷と、水をたたえる大小の湖。この光景を見てワクワクと心が躍らないはずがない。

空港でレンタカーをピックアップして一路北へ約100㎞、ワナカへ走り始める。
飛行機がDELAYして1時間遅れてはいたものの、少しばかり遠回りして6号線を向った。
羊の放たれた牧場、白く光る峰々、川の流れを確かめ景色を味わうかのように走った。

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2nd Day

キッチンで簡単な朝食を作って食べたら、7:00過ぎに気持ちのいい朝焼けに染まるワナカ湖を観ながらモーテルを出て、カメラマンと待ち合わせの場所に向かう。
今回のNZの企画のナビゲーターは久保勇。プロスノーボーダーでもありながら世界中のプロライダーの写真を収めている。 冬はスノーボードスクールの経営をしながら、夏はNZの雪を20年間滑り続けている強者だ。

3ヶ月ぶりのスノーボードに、新しい道具に、一つ一つのことに心を躍らせながら山に向かう・・・このときめきがあるからこそ、シーズンインはたまらないんだよね。
今日はCARDRONA。ワナカから89号線を南下して右に曲がると、未舗装のデコボコ道を登る。これこそKiwi Styleだなぁ~なんて懐かしんでいると車はどんどん高度を上げた。真横には雪が現れると眼下には壮大な大地の広がり。見上げるとブルーの空に大きな山一面のCARDRONAのスロープが浮かぶ。

新しいブーツはまだ硬いものの気持ちよくエッジが立つ。新しい板はもうすこし乗り込まないと唸り出さない。それでも久々のスノーボーディングにはヤバいほど解き放たれる。
大きなNZの原野に何も考えずに滑り込んだ後は、心地よい疲れがまた気持ちいい。

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3rd Day

天気は完璧。ここ数日新しい降雪はないものの雪のコンディションはエクセレントで、グリップが特にいい。その時はこれから起こることを知らずに、純粋にCARDRONAの朝の光の輝きに痺れた。
ロケーションを選びながら撮影も順調に進んでいたその時・・・
カメラマンからのスタートの合図を待つ俺に、後ろからコントロール出来なくなったスキーヤーが突っ込んできた。相手は大男で、かなりのオーバースピード。いくら俺がレスラーみたいな体型だからと言っても、かなりの衝撃を受けた腰と臀部には重い違和感がある。
何とか大丈夫かな?? と撮影を進めるものの、右足をもう踏めない俺がいた。

ボトムに降りてからリフトに乗って登るときに、リフトに腰かけられないくらいの痺れが襲ってきた・・・冗談抜きで痺れながら、リフト上でモジモジ動く変な俺がいた。
CARDRONAのメディカルセンターでドクターに診察してもらうと、神経の痺れは打撲の衝撃の影響だから安静にして様子を見るしかないと、痛み止めをもらって下山する。
下山中も痛くて右脚は痺れているのに・・・ 再度眼下に広がるNZの美しい風景にも改めて感動して、こころも痺れるのであった。

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4th Day

残念だけれどday off. いろんなことが起こるのもまた旅だ。
予想以上に回復せずに重い痛みと尖った痛みの両方が、右側の腰から脚、足の指まで襲う
カメラマンの久保君には山に行ってもらい、彼の感性で好きな写真を撮ってきてもらう。
俺はベッドに横になって静養しながら、山のように持ってきた本を読む。
そして痺れる足でアクセル踏みながらBeacon Pointへ向かい、ワナカ湖を眺められる湖畔に横になって山を観ながら過ごす。日差しには春の優しさが含まれていた

ワナカのダウンタウンの町並みは10数年前とは少し変わり、新しいお店が増えて賑やかになっていた。少しばかり浦島太郎になりながらも、それでも昔と変わらない自然と、ワナカの街の持つ穏やかでのんびりしたやわらかさを確かめられる町がそこにはあった。

アクシデントは要らないけれど考え方次第、こういう時間もまたいい時間だ。
明日は雪の上に戻りたい、しかし無茶は出来ない・・・。

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5th Day

朝起きて・・・ 調子はというと、まあ睡眠中も痛かったのだけれど、鈍い痛みが下半身に残り少し動くと尖った痛みがまだやってくる。
どういう体勢が一番楽なのかわからない感じ(涙)
いつの日にか旅はレジャーになったけれど、旅はいつまでたっても男には冒険だ。

ワナカ湖から見える山々が朝日に染まってピンクに色づく早朝に、Mt,Aspring 3027mの尖った山頂を見て、気分を高めながら車にボードを載せてカメラマンのところまで向かう。
試練を乗り越えてこそ感じるものも大きいとか言いながらも、気持ちだけでいい写真は撮れないことは、長い経験から一番俺が分かっているつもり。久保君の心配そうな顔を見て今日の欠席静養を決めた。

休むと決めたら無理はしない。こんな日はTVで本物のラクビーを観戦しながら、切れない包丁でみじん切りにした玉ねぎをじっくり炒めながら夕食のカレーを仕込んだ。俺の今日の勝負の場所はキッチンでした。

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6th Day

NZ滞在も終盤。痛み止めを飲んで今日はTREBLECONEへ向かう。まるで太古の時代ギャートルズが出てきそうな大きな岩の山角を曲がった山道の上にこのスキー場は広がる。

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スキー場までの道は、まるでラリー選手権かというようなワイルドな砂利道が続く。
リフトは2本しかないけれども、南島で一番大きな面積を持つ。正面から見える山とその奥の山へとさらに高度を上げて天空へと架かるようだ。

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圧雪のコンディションは完璧。しかし俺の滑りは十分ではなく、だましながらではあるけれどもなんとか滑られる。ワナカ湖に向かって滑り落ちていくようなバックショットも含め、ピーク横のsummit ridgeまで登って何枚かのカットを収められた。通常では滑らないコンディションなれど、俺はプロだ。残さなきゃならないカットもある。

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さてそれはさて置き、NZには美味しいワインがたくさんある。
ということでTCの帰りには最高のロケーションの中にブドウ畑が広がるRIPPON Vineyard に寄り道。Cellar Door を開けてお勧めの赤ワインを買った。ワナカ湖を望むCentral Otago で熟成されたこの一本は、NZ最後の晩に飲もうと思う。

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7th Day

ワナカベースでの滑りは今日が最終日。TCにするかCARDRONAにするか朝から悩んだ・・・ だって両方とも素晴らしい山だから決めかねてしまうけれど、ボードテストの内容も考えて中斜面が多いCARDRONAを選んだ。身体は完璧なコンディションじゃない中で、どれだけボードのテストが出来るかは微妙だとしても、どんな時でも感じられる直感だけは大事にできる。久保君と撮影出来るのも今日は最後。基本的なボードの性能をテストに必要なのは、急斜面や必要以上のハイスピードではない。中緩斜面でじっくりボードに向き合って乗り込めば、板がどんなプロフィールを持っているか見えてくる。その時に感じられる『感』は大概当たっていることが多い。

山から降りて写真の整理をしてもらい、ワナカを離れた。

今回は峠道の86号をQueenstownへ向かう。ワイルドな峠道はNZでのドライブの最高の醍醐味、アップダウンと青い空を抜けながら走った。
ワナカほどではないけれどQueenstownの街も、また以前来た時に比べたらだいぶ開発されていた。街中にあるショピングセンターの地下にはフードコートがあって、昔訪れたときはここでよく夕ご飯を食べた。今日はNZに籠って滑りの修行に来ているうちのスタッフと待ち合わせして、昔のまま懐かしい場所で食事したよ。

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8th Day

今も昔も終わらない冬を求めてNZに雪を求める。そしてワナカやQueenstownは、夢を抱えた連中が集う街だ。QueenstownベースではCoronetpeakとRemarkablesの山がある。今日はリマに滑りに行くつもりだったけれど、脚の痺れもあるので雪から離れてDay offにした。

ぶらぶら街を歩きながらSkyline ゴンドラに乗り込み空中散歩だ。前回はここからタンデムでパラグライダーを飛んだ場所。 眼下に眺める町並みは変わっても、ここからみえる遥か遠くの風景は少しも変わっていなかった。それは息を呑むほどに美しい。

飲むほどにと言ったら・・・そうあの時のワイン。昼夜の寒暖差、湖からの風を受けて醸しだされたワナカの赤は、感慨無量。美味しかったよ~~(^^♪

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9th Day

シドニーを経由して日本に戻る為に、飛行機は狭い山々の間を上昇してオーストラリアに向かって飛び立った。久しぶりにNZに来てよかった、また来年も来たいと思う俺がいる。
打撲で十分に滑られなかったから滑り足りない気持ちもあるけれど、もっともっとじっくり時間をかけて滑り込みたい斜面ばかりだったからだ。それにこの国に流れる時間と大自然が与えてくれる優しさや大らかさが、本当に気持ちがいい。

「OPEN ARMS」  People, Sports, Culture and Travel

興味を持てば持つほどに、旅はどんなときにも新しい発見を与えてくれる。それは自ら外に飛び出さなければ手に入れることはできないけれどね。

帰路の途中、上空10000m飛行機の窓から見る星は、窓越しにも強く輝いていた。
NZは本当に星がきれいに見える場所だ。
ワナカ湖の畔でTCの圧雪車の明かりを見ながら、満点の星空を見上げた時の感動を思い出して観ながら・・・ また眠りに入った。

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プロフィール

牛山基樹

1965年3月3日 長野県生まれ
第1期 プロスノーボーダー
牛山基樹プロスノーボードスクール(川場・軽井沢スノーパーク)代表

プロ戦での優勝数回。プロとして獲得した日本タイトルをひっさげて、世界挑戦の日々をおくる・・・。
Masters W-CUP SL15位の記録を持つ。
1998年レースを引退後は、TV・Radio・DVDなどのメディア活動の他に、イベント、ツアーなどで活躍している。
また Konayuki Snowboardsの開発・販売を手掛けている。

SPONSORS
Konayuki Snowboards,CHIEMSEE,DaKine,FLUX Bindings,VonZipper,X5 footgear