15.16 PSA ASIA Snowboard Pro Tour round 9
2016年3月10日 (木) PSAプロツアー第9戦。
蟄虫啓戸、雪解雨が春近し奥美濃の山々を叩くように降り注ぐ。
例年とは全く景色の違う、雪の少ない飛騨街道を急ぎ足でレジストに向かう中、相沢選手より着信が入る。
「うっかりエントリーを忘れて!」現地エントリーができるので大丈夫です。
我らがレジェンドオブプロの相沢氏、この時点で予選最後尾スタート。
雨はいっそう強さを増し波乱含みの兆しを予告していたのかもしれない。
全国的に雪不足の中、懸命にコンディションを維持していただいたダイナランド、γライナーリフト沿いのダウンヒルコースには前日まで投入された100袋以上の硫安に加えさらに30袋を攪拌し念入りにコースをグルーミング、大会に備えていただいた。
多少コースは短くなったもの全長300m、標高差60m、緩やかに2枚の階段状の平均斜度12度のコースに、前回、PSA PGS in Sugadaira Pinebeak 同様、鶴岡がセッターを務める。
ライダーズミーティングでの通達どおり、全日本のアマチュアセットよりも旗門数が増え、13m~13.5m間隔で22旗門のゲートが選手を待ち受ける。
若干、右に垂れ、左右差の感じるコースに匠、鶴岡の妙味のあるセットが今から始まる戦いにどんな展開を繰り広げるか見物だ。
海外遠征中の神野や吉岡のエントリーを欠きながらもその他はフルメンバーのグリット。
この時点で安定して上位をキープする小林がイエロービブを纏い、同じく常に入賞圏内の河島、今がレッド、グリーンビブ。
ブルーに成田、続いて後藤、晃平と上位を伺う。後には地元の杉本をはじめ宮尾、翠川のベテラン、10番手には最近調子をあげている黒木までがトップ10。
女子は国内ではトップをひた走る志鷹がイエロービブ、椎葉、村上、吉井と続くが、丸山は最後尾スタートで予選を迎える。
硫安で締まったバーンでインスペクションが始まる。
13mの短めのセットに最大4枚程ふられたコースを選手が入念に下見をする。
気温が上がり始めると一気に緩んで掘れる可能性があるが曇天の空模様でまだ影響はなさそうだ。
若干の片斜で垂れの早い右のレッドコースが素直に見えるが、両コース共、ヒールサイドが若干の登りになる。
コース中盤から更にフォールラインから逃げるように左に折れゴール手前から右へと全体的にS字に配置されたゲート。ヒールサイドの処理がキモになるのか?
斜面の変化とあわせて垂れの面の合わせ、振り幅の微妙なセットは何処も気が抜けない絶妙なレイアウトだ。
予選1本目。
まずは志鷹がレッドコースで29.53とさい先良くタイムを刻み後続を牽制、続く椎葉31.42、ブルーコース村上は30.90。
3組目レッド吉井が30.25と好タイムで志鷹に迫るとブルー城所も31.11で村上の直ぐ後ろにつける。
5組目レッドからは三木が椎葉に迫る31.49、続いて松沢が31.87と、31秒を挟むあたりで攻防。
最後尾から勇上と丸山がスタートし勇上が30.73の好タイム、丸山が30.35でブルーコースのトップに踊り出る。
男子は1組目小林と河島がスタート。
レッドコース小林26.21、ブルーコース河島が26.64。2組目、今も26.83と接敵。
3組めからはレッド後藤が27.23に対しブルーから晃平が河島を大きく上回る25.38と会心のランで会場を沸かせる。
続く4組目からは杉本が27.54、宮尾が27.08。6組目からKIMUTOMO27.33、澤井27.69、続くレッドコース、こーたが27.16、次に若林が27.86と、27秒台でのセカンドグループの熾烈な争いが続き2本目に折り返し。
2本目をはさんでコース整備が行われる。
予選1本目が終わり、やはり起伏の大きいブルーコースの痛みが激しい模様。
KOに向けてのポジション取りも気になるところ。2本目の各選手攻め加減が吉凶を分ける。
女子2本目。
最後尾から指定席を奪回した丸山と志鷹が1組目からスタート。
やはりレッドコースに分があるのか?丸山の意地か?丸山が32.08、志鷹が32.23と丸山が喰らい付く。
2組目村上と吉井が33秒台で続き、3組目からは勇上が32.57と好タイムをマークし3番手に浮上。
続く越坂(綾)、椎葉と33秒台のタイムが刻まれる。6組目の三木が31.95と奮起し5番手に浮上しKOのグリッドを奪取した。
男子は1組目晃平、小林がスタート。
小林が29.91と若干伸び悩んだのに対し晃平は27.58と大きく引き離す。
2組目河島、今は28.50、28.34と互いに一歩も引かず晃平の後につける。
続く宮尾、こーたが29秒フラットで僅かの差で小林のすぐ後ろに付け後続の出方をゴールで待つ。
4組目からレッド戸田が28.69、5組目澤井も28.98と好タイムで宮尾に僅差で接敵。
KIMUTOMOも29秒台で澤井に喰らい付く。
後方からは相沢、橋本らが29秒中盤のタイムでジリジリと詰め寄った。
KOの男子オーダー
1 晃平 vs 16 杉本
8 澤井 vs 9 KIMUTOMO
5 こーた vs 12 野田
4 小林 vs 13 藤本
3 今 vs 14 後藤
6 宮尾 vs 11 相沢
7 戸田 vs 10 橋本
2 河島 vs 15 今井
KOの女子オーダー
1 志鷹 vs 8 椎葉
4 吉井 vs 5 三木
3 勇上 vs 6 村上
2 丸山 vs 7 越坂
地元、杉本の奮起も届かず危なげなく杉本を下した晃平は、澤井を2本目で逆転勝ちで意地を魅せたKIMUTOMOと対決、KIMUTOMOも晃平によく喰らえ付いたがあえなく敗退、順当に晃平が勝ち進む。
野田を危なげなく下したこーたと、1本目藤本の猛追に0.1秒のビハインドを許しながらも逆転勝ちで事なきを得た小林の対決は、こーたの追撃を許さず小林が勝ち上がり。
東北の潰し合い、後藤を危なげなく制した今と、オガサカ同門対決で、予選最後尾スタートで火が着いた相沢が宮尾を下して今と対決。
ヒートごとに神憑る相沢の猛攻の滑りは1本目、今を完全に捉え1000分の4秒差でアドバンテージを取るも2本目には届かず、相沢の進化を遂げた熱い滑りは観客を大いに沸かせた。
アマチュア同士の対決、初KOの橋本を経験値で上回る戸田が危なげなく制し、こちらも初KOの今井を下した河島が、1本目戸田に0.24躱されるも2本目を順当に制し勝ち上がり。
女子は椎葉を危なげなく制した志鷹が勝ち上がり。1本目1.43で先制した吉井だったが2本目に三木が追いつき逆転する。
予選のでの滑り同様、勢いに乗る勇上は村上を圧倒し順当に勝ち上がり。
予選7番手の越坂相手にボードチョイスを誤った丸山が失速、1本目0.18のビハインドを埋めることなくここで敗退、越坂が勝ち上がる。
Semi Final Round
ブルーコースの痛みが激しいのか、レッドコースの後半の伸びが見れて取れる。
未だ気温はさほど上がらないが、時折差し込む太陽が刻々とコース状況を変化させる。
左右差のあるセットは観客側としては大変面白いが、選手の心境は如何に、一触即発、いつ何が起きてもおかしくない。
速さ、強さはたまたツキが勝敗を分けるのだろう。
志鷹 vs 三木の対決、綺麗にスタートをきり全く同じタイミングで駆け下りる両選手。
真横を走るレッドコース三木を離かかれない志鷹が焦ったか、ブルーコース中盤で雪面に足元をとられる、瞬間、三木が前に出る、咄嗟、斜度も残しておりミスを最小限に抑え緩斜面に速度を繋ぎ再度三木に並び駆けながらゴール。
これまた僅か1000分の4秒さでしのいだ。コースを入れ替え2本目同時スタート、今度はブルーの三木がコースに足元を取られながら志鷹に接敵、序盤の僅かな遅れを取り戻し前に出ようとするも、1本目に志鷹がくらったバンクに僅かにはじかれ、その隙に志鷹が前にでてその儘フィニッシュ。僅差で志鷹が三木を制した。
越坂 vs 勇上は、レッド越坂がスタートで前に出るも序盤のヒールサイドで痛恨のミス。
2本目、越坂の追撃も虚しく勇上がリードを守り勝ち上がり。
小林 vs 晃平。スタートで前に出たレッドコース小林が直後バンクに掴まり失速、すぐさま体制を立て直し晃平に迫るも僅か0.35及ばず2本目へ。
僅かな遅れを取り戻そうと後からスタートした小林が猛追を掛ける、それ以上にレッドコースを攻め飛ばす晃平と等間隔をおいてアタックを試みるも無情にもブルーコースのバンクが行く手を阻み攻めあぐねる小林、果敢にレッドコースを攻略した晃平のランが小林をジリジリと引き離しフィニッシュ。
予選の速さどおり決勝に勝ち進んだ。
河島 vs 今。
スタートから全く同じタイミングでゲートをスルーしていく両選手、お互い渾身の滑りで斜面を駆け下りる。
中盤で今が仕掛けたかと思った矢先、フラッグに右手を取られ?僅か僅かにラインがはらむ、一方、、河島は鞠が撥ねる如くゲートにアタックをかけ今の追撃をかわし0.31の貯金で折り返す。
2本目、得意の絶妙なスタートから今を引き離しにかかる河島、手ぐすね引いて待ち受けるはずのブルーコースを軽快に駆け下り今との距離を十分に離し勝利を決めたかに見えた次の瞬間、緩斜入口手前でバンクにつかまり弾き飛ばされる。
咄嗟に体制を立て直しプッシュするも失った速度は戻ることなく今が脇を掠め河島の前に出た。
Final Round
順位決定戦では女子、1本目越坂がSemiと同じミスで自滅し挽回することなく三木が表彰台を守った。
男子は河島がSemiの雪辱を晴らすが如く小林に0.13の差をつけ1本目を奪取するも、2本目ブルーコースで自滅、落ち着いたレース運びで小林が逆転した。
女子決勝は志鷹 vs 勇上の対決。
ダイナランドとの相性も良く昨年同様、表彰台を確定した勇上が志鷹に挑む。
スタートから直ぐに勇上を離しにかかる志鷹、ブルーコースで一瞬バンクに受けてはらみそうになるも十分の距離を保って1本目を勝ち取り、2本目も十分なアドバンテージを保ってフィニッシュ。
今季の2勝目を飾った。
優勝 志鷹 あかり
2位 勇上 華子
3位 三木 つばき
今回も最後の最後まで見逃せない。
予選から速さと強さを見せつける晃平に対するは、KOに入り毎度きわどい対戦で勝ち上がってきている今との対決。
刻々と変化するコースコンディションはワンミスが命取り、所々に地雷が埋め込まれているかのような危険なコースをきっちりと攻略しなければフィニッシュをきることがかなわない。
久々の勝利の美酒を味わうためにもお互い一歩も譲れない。
いよいよオーラス決勝1本目、お互い快調にスタートをきりコースに踊り出る。
早そう晃平の腰が浮かされ板が足場を失う。
ヒールサイド、軸を傾け寸でのところで体制を立て直すも数ターンは速度が戻ってこない!1旗門を離され今を追いかけるが痛恨のミスを取り返すことなくキッチリと滑りきった今におよそ1旗門分のアドバンテージを渡したまま1本目を終了した。
0.71のビハインドを背負いレッドコースのグリッドに入る晃平、方や今はブルーコース、本日の各対戦をかえりみればまだまだ何が起きるか予測がつかない。
最後の1本!先に今がコースへ放たれる、直後間髪を入れずに晃平が絶妙なスタートで後を追う。
ゲートを潜るたびにジワジワと距離を詰める晃平、半旗門差からすぐさま並び掛ける晃平の猛追にたまらずスパートをかける今の身体も浮つきかける。
同時に緩斜面に駆け下りる両選手。
ほんの一瞬早く今が先に身体を伏せたかに見えたが、どちらが先にラインをきったか判別がつかない。
行方は時計が刻んだ僅か0.057の差だけであった。
フィニッシュで掲げられたブルーのフラッグを見た今が両膝をついて屈ぷして喜びを噛み締める。
久々の通算4勝目は激戦を闘い抜いて格別な思いであろう。静かな喜びが印象的であった。
優勝 今 拓洋
2位 晃平
3位 小林 学
4位 河島 広輔
5位 こーた
6位 戸田 大也
今大会は、雪不足のなかコースの保全に尽力を尽くしていただき、素晴らしいバーンを提供していただいたマックアース・ダイナランドスキー場様、運営に尽力をそそいでいただいたJSBAに感謝を申し上げます。
今の活躍と共に若手の躍進や、なにより大御所、相沢の最後尾スタートからのセミファイナルでの、優勝の今との肉薄したバトルなど、見所満載の興奮するレースであった。
新旧の入り乱れる予測不能な展開で今季は一味違った盛り上がりをみせるAL種目。
次戦は信州に舞台を変えアサマ2000パークスキー場にて、Round 16 GSS Present Sanada juyushi CUP 2016 が開催されます。
今後も PSA ASIA ALPINE Pro Tour にご期待ください!!!