ヤンネ・コルピやマルクス・マリーンなどのフィンランドのトップライダーをはじめ、今急成長中の安藤南位登をはじめ日本人メンバーが集結。TEAM kissmark、そしてkissmarkは世界で知られるブランドとなった。現在kissmarkのスノーボードは国内で開発、そして製造されている。意外とそれを知らない人は多いのではないだろうか? 今回kissmarkのボード開発現場を訪問し、SLOTやGROOVEといったオリジナリティ溢れるアイディアを搭載したボードが、どのように作られているのかを見ることができた。さあ、その興味深い製作現場を紹介しよう。
kissmark製品の歴史
1997年にブランド誕生後、スノーボード人気の急上昇と共にブランドも急成長を遂げたが、2003年あたりからは自社研究・開発設備を設置して、国内にて自社でのスノーボード開発、試作をスタートさせた。2006年トリノオリンピックのハーフパイプ種目でkissmarkボードは世界的にも知られることになり、2007年からヤンネ・コルピらフィンランド人の主にハーフパイプで活躍する選手たちと用具契約を結ぶ。その頃から本格的に自社開発、生産という選手対策活動をスタート。フィンランド選手へは自社工場で製造したプロトタイプを提供し始め、その形をもとに2008年には『TRINITY』を商品化。2010年にはSLOT、GROOVEシステムを開発し、商品化。このタイミングから商品化にあたり生産拠点を日本国内の協力工場へ全面変更(自社で設計~開発~試作・評価したものを国内の協力工場へ生産委託)される。その後も選手との共同開発からのノウハウを導入し、ボードを進化させ続けている。
Q_kissmark製品の製造において、品質管理で苦労されることは、どんなところでしょうか?
kissmarkスノーボードは芯材にWOODコアを使用しています(一部モデルを除く)。そのWOODコアが強度や性能を左右する重要な材料となります。WOODコアはヨーロッパにあるスキー・スノーボードの芯材を扱うメーカーより仕入れをしています。選定理由は品質管理がしっかりとされ、歪みや変形が少なく、我々が要求する芯材としてのクオリティーを安定した状態で届けてくれることが大きな理由です。ただし、材料の品質が良くても、その後の加工精度が悪いとせっかくの品質も台無しになってしまいます。
現在このミタケ・テクニカルセンターではボードのベースを作成し、その後の製作を国内の協力工場に依頼しています。我々の協力工場はこれらを要求どおりに精度よく加工してくれる専用の設備を所有しており、要求する公差内で加工することが出来ます。
コアの厚みはスノーボードの強度や性能に大きく起因する要素です。設計したスノーボードのフレックスを再現するためには寸法管理が重要です。ここが重要な品質管理のポイントとなります。次に重要な工程は成型プレスの工程です。金型に材料を組み込みながら、接着剤を均一に塗り、均一な圧力をかけて加熱プレスすることで金型どおりの製品が生まれるわけですが、この金型の精度はもちろんですが、加熱プレスの均一な状態を維持することが日常管理で特に気を使うところなのです。
Q_ここ数年でキャンバー形状もさらに様々な形状が存在し、製造も難しくなってきているのでしょうか?
スノーボードのキャンバーはプレス成型する際に形状付けします。プレス機には数センチ刻みで高さを変化させるキャンバー形成装置が付いており、これを上げ下げして調整することでキャンバーの形状をつけることができるのです。納得のいく形状に仕上げていくためには設計データを用いて,何度も試作を重ね、性能を確認する作業において妥協をしないように労力を注いでいます。
Q_kissmark製品はSLOTやGROOVEなど他社にはない独特な形状をしていますが、それをつくる上での難しさなどあったら教えてください。
芯材にSLOT,GROOVE用の素材をインサートするのですが、芯材を正確な寸法で加工する必要があるため,試作段階ではどういった工程順序で加工するべきか?をもとめて何度もテストしました。量産でのバラつきを防止するために、多少なりとも面倒くさい工程で正確な加工をしています。ここが苦労する点ですね。
Q_kissmark製品は他社のラインナップと比較すると、かなりコストパフォーマンスが高いと考えられますが、工場としてローコストで良いものを供給する上で工夫されている点はありますか?
コストは資材費・加工費・利益などで構成されますが、資材費については輸入経費などを出来るだけ安く出来るように一括発注・仕入れをしたり、加工費においては生産の効率を高めて日量数を増加させたりと努力しています。大量に一括で生産オーダーすることで工場の稼動に自由度を与え、人手をかけないように改善することでローコストオペレーションを実現しているのです。これは正直,切りの無い活動となります。当然ですが、同時に工程の品質管理や製品の検査は欠かさず行なっております。検査も工夫をして、早く正確に検査できるように改善活動を行なっております。
Q_その他にkissmarkというブランドの優位性はどのような部分にあると考えていらっしゃいますか?
生産工場が日本にあるため,同じ日本人同士で開発や生産をしていることは大きいですね。コミュニケーションは細部の仕様や作るうえでの注意点などが多く、異国ではなかなかスムーズに伝わらない。国内生産では、いわゆるこだわりの部分を共有できることです。また目標に対しても共有でき、日本のウインター市場の活性化に向けてお互いでアイデアが出せることです。同時に世界にも目を向ける必要があるため、フィンランドの選手やコーチと契約をして、世界レベルの大会で通用するボードつくっていることをテーマに開発を進めていることも無視できない話だと思います。
Q_今後kissmarkというブランドについて、製造面では今後どのような部分を進化、改善させていきたいとお考えでしょうか?
作り手としてはやはり世界に通用する、ワールドカップやオリンピックで勝てるボードを作っていきたいことです。
そういった活動と並行して,日本国内に向けて、乗って楽しくなるボードを作っていくことが課題だと考えます。SLOT、GROOVEシステムは、そういった一般のお客様がボードに求める必要な要素をどうやって取り入れていくかがテーマで開発された構造です。これらを進化させる上でも「ボードに求めることは何なのか?」を多くのお客様から聞き取ることが重要なことだと思っています。そのために製造面では,何でもできるような工場であるべきと思いますので,生産技術面を高めていくことが重要だと思っています。またJAPANクオリティーとローコストオペレーションをもっともっと改善していかなければならないと思います。
>answer テクニカルセンターミタケ 商品開発部:石川雅也氏 長年に渡りkissmark製品の進化と品質管理に携わってきた石川氏。 試乗会でお客様がボードを試した後に 「楽しかった」と言ってもらえることが一番嬉しいと語る。
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