あの日から松本遥奈のハーフパイプに対する情熱は何も変わっていない。意思の強さは昔からあった。負けず嫌いも半端ではない。確固たる夢と闘志を燃やす。目指すは平昌冬季オリンピック・女子ハーフパイプ日本代表。今シーズンは世界中の大会に出場しながら実力を出し、自分のレベルがどの位置にあるのかを確認する重要なシーズンだと語っていた。
覚悟を持ってスノーボード人生の大一番に挑む
北の大地、北海道札幌市の郊外で暮らす遥奈にとって子供の頃の冬の遊び場と言えば必然的にスキー場となる。小学生に上がる頃には自宅近くの山頂からスキー板を履いてボーゲン姿勢で一直線。怪我やスピードを恐れないその姿にまわりの大人たちは肝を冷やしたと言う。スノーボードは彼女が小学2年生の8歳からはじめた。「お父さんと工藤洸平君のお父さんが同じ学校の卒業生で家族ぐるみの付き合いがあって。洸平君のお父さんにスノーボードのいろはを教えてもらいました。けど、最初は転ぶし、痛いし、スキーみたいに上手く滑れないし、あんまり面白くなかったですね」
そんな遥奈に大きな転機が訪れる。初めて観戦 に訪れたハーフパイプの大会で華麗に舞う選手たちの姿に10歳の女の子は心を奪われた。「今でも鮮明に記憶に残っています。大きく高く飛ん で、クルクルと回転技を繰り出す彼らの姿に釘付けになりました。衝撃的ですごくカッコ良くって、自分も目の前の選手たちのようにハーフパイプで滑ってみたい。その日からどうしたら上手くなれるのか、どうしたら高く、そして回ることが出来るのかいつも考えていました」
瞬く間にハーフパイプの魅力に引き込まれていった遥奈は、抜群の運動神経と類まれなる集中力を武器にメキメキと実力をつけていく。大会に出場すれば結果も残しはじめ、急速なステップアップを遂げる。特別な輝きを放ち始めた彼女であったが、決して傲慢になることなくさらなる頂きを目指すべく貪欲に努力を重ねていった。そして彼女は今、次回の平昌冬季オリンピックでハーフパイプ日本代表選手となって表彰台に立つ夢を叶えるための戦いに挑んでいる。「12月上旬にアメリカに渡り練習も兼ねて1ヵ月ほど滞在し、その期間中にワールドカップに参戦。帰国5日後にはスイスへと旅立ちラークスで開催される大会に出場して、そのまま現地から再度渡米し再びワールドカップに参戦。2月頭には韓国でおこなわれるプレオリンピック大会に出場します。日本に帰国後も毎週大会に出場することになっていて、結果次第では3月上旬のスペインでの大会にも参戦予定です。落ち着くのは3月中旬におこなわれる全日本選手権後となります。どの大会も参加選手のレベ ルは高いですけど、自分が得意とするエアの高さと F9を武器に好結果が残せるように頑張ります」
北海道の地で育てられ、大勢の人の助けがあって今の自分がいることを遥奈は自覚している。だか ら、親や恩師や仲間だけではなく、関わるすべての人への感謝を込めて彼女はオリンピックへと邁進する。あの日パイプのボトム下で見た光景に憧れをもってはじめた少女は、ついにハーフパイプの最高 峰の大会であるオリンピックの出場を狙える位置まで登りつめてきた。
★PROFILE
松本遥奈
1993年7月26日生まれ、北海道札幌市出身の23歳。身長157cmのA型。昨年、ROXYへ電撃移籍し、女子力も大きくあがったと笑って答えてくれた。胸下まである自慢のロングヘアーをなびかせて、ROXYのチームメイトと共に夢の五輪へと向けて爆進中。スポンサーはROXY, SALOMON, OAKLEY, GIRO, DOMINATOR, INDUSTY, SIDAS, GET-UP, CRUISE, MASHU