トップクラスのライダー、そして世界中のスノーボーダーの足元を支えて20年の歴史を誇るDEELUXE。このブランドが特に力を注いできたテクノロジーが、インナーを自分の足型に合わせる「サーモインナー」というブーツ成型技術だ。サーモインナーのことをより良く知る為に、今期ショップ内に「成型ステーション」を作り、長年お客さんの足にマッチするインナーを提供してきた東京・神田にあるF.JANCKの店長に実際にサーモインナーを成型してもらい、その成型過程とともにメリットを取材した。 また滑るシーン別に、DEELUXEのブーツを熟知するライダーにサーモインナーの良さを聞いてみた。
Photo: Yoshifumi Shimizu
早速、F.JANCKの店長島津さんにサーモインナーを成型してもらう。
★STEP1
ブーツサイズを測る
DEELUXE専用のゲージに裸足で乗っていただき、ゲージの中心に足を合わせて、カカトを寄せ軽く膝を曲げます。この状態で足の実寸(縦の寸法と横幅)を測ります。ほとんどの人が右足と左足のサイズが違うので、左右大きい方の足のサイズをもとにブーツサイズを選んでいきます。今回の場合、縦の実寸サイズは25㎝手前くらいで少し横幅があるので、ブーツサイズは25.5㎝か26.5㎝をオススメします(DEELUXEは1㎝ピッチ)。ここでのポイントは、一度ブーツの試し履きをしていただき、お客さんとの会話の中で遊ぶフィールドや好みを聞き取り、ブーツのサイズを決めていきます。昔はピッタリのサイズが多かったんですが、最近はちょっとでも触ると痛いというお客さんが多くなっていますので、少し大きめでゆとりを持ったサイズをオススメするようにしています。
★STEP2
インナーを温める
専用のオーブンでインナーを温め、素材を柔らかくして焼きたてのフカフカのパンのようにします。寒い時期は10分程度温めていきます。
★STEP3
温めている間に準備すること
足のつま先に専用のカップ(S, M, Lの3サイズ)をはめます。このカップをはめずに成型してしまうと、実際の指の形ができてしまいキツくなってブーツを長時間履けなくなってしまいます。そのため指先は成型せずに、キャップをはめてスペースを確保します。そのサイズに合わせてインソールの余分な部分をハサミでカットします。
幅広、甲高、外反気味で骨が出てしまってる人は、別途でカスタマイズパットがあります。それを自分の足の癖に合わせて貼っていくことで、インナー内にスペースができて余計な圧迫がなくなり、より快適にインナーをカスタマイズすることができます。これらの微妙な調整は、成型の数をこなし経験のあるスタッフがいるお店ですることがベストです。当店では、こだわっているお客さん向けに店独自のパットを作っているので、より細かくカスタマイズをすることが可能です。
ここまで準備ができたら、カップとパットを着けた状態のままDEELUXE専用の薄い繊維を使っているサーモソックスを履いていただき成型を待ちます。特に女性の方は寒いと分厚いソックスを履きたがるんですが、そうするとせっかく足の形をとっても靴下が分厚いと形がぼやけてしまいます。ですから、こういう薄手で自分の足によりピッタリしたソックスで成型し、実際に滑る時もそれを履くことでよりホールド感が良くなって、ブーツの中でズレが少なくなります。この専用ソックスは見た目は薄いのですが実際は非常に暖かいので、当店で成型したお客様にもオススメしています。
★STEP4
温め終了
温め終わったインナーを取り出し、熱いうちにアウターにセットします。セットしたブーツに足を入れていただき、馴染ませていきます。その際にインナーにシワができないように膝を曲げてカカトを浮かせて落としてください。その後、軽くブーツを締めてから、足裏を水平に叩いたり、カカトもしっかり落として軽く曲げ伸ばしを数回してからブーツの本締めをしていただきます。その後インナーが冷めるまで10分ほどブーツを履いたままお待ちいただきます。その間、座らずに店内を歩いてもらっています。動いてもらった方がより自然な足の形ができるからです。ブーツにしっかりと体重を乗せている方が、より足の形がくっきり出ます。歩くのもそうですし、滑るイメージで膝を入れてもらうとよりヒールカップのカカトが深く出来上がるので、完成したブーツのカカト浮きがしづらくなります。
★STEP5
完成
時間になったら座っていただきブーツを脱いでキャップやパットを全部とっていただきます。再度ブーツからインナーを外し、出来上がり前と見比べていただきます。最後にソックスだけを履いた状態で再度ブーツを履いていただきます。ちょっと動いてもらい、全体的にストレスがないか、カカトのRのはまり具合や指先が変に当たってないかなどを確認していただきます。カカトや足首がしっかりとホールドされ、指先はちょっと空いていてしっかり動かせればベストな状態となり完成です。
※サーモインナー®はDEELUXEの登録商標です。
成型前
成型前のストレートなインナー
成型後
自分の足の形になっているインナー
サーモインナーのメリットとは??
成型で足の形がとれるのはもちろん。あとは暖かいのもひとつのメリットですし、素材自体の形を変えるため余計なパーツをつけなくてもフィット感が出せるので軽いというメリットもあります。ブーツの軽さを気にされるお客さんが増えていますので、とても重要なポイントになります。また1シーズンで30~50日滑るような人は型崩れしちゃって、シーズン初めは調子良かったけど、後半はグダグダになってしまったっていう場合もあるんですが、サーモインナーだと焼き直しができるので、何回かは新品に近いフレッシュな状態に戻すことができます。そういう形で長く使うお客さんが多いですね。インナーを自分の足型に成型して、あとは自分の滑りのシーンに合わせてアウターをお選びいただくことでよりベストなブーツをお選びいただけると思います。
SNOWBOARD SHOP F.JANCK
店長: 島津圭佑さん
www.f-janck.com
EMPIRE(今回の使用ブーツ)
COLOR: Army, Black
SIZE: TF 22.5~30.5㎝(1.0㎝ピッチ)
PRICE: ¥46,000
新型ソールを採用し、昨年よりも幅を広く作っているため、よりパワー伝達が良くカービングやしっかりとしたエッジングをするライディングに適しています。バランスがすごく安定していて、オールラウンドに遊べる全地形対応モデルです。アウター全体が左右非対称になっているので膝が内に入りやすく、バランスも取りやすくて、安定感のある滑りをサポートしてくれます。またビーテックスという防水フィルムがシームレスで入っているので、縫い目がなくて水が滲みにくいのも特徴です。なのでバックカントリーシーンにおいても水が滲みにくくオススメポイントですね。布施 忠くんも使用しています。
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滑るシーン別に、DEELUXEのブーツを熟知するライダーにサーモインナーの良さを聞いてみた!
今野 “ポルノ” 昇
使用モデル: INDEPENDENT
普段は八方でフリーライディングをしつつ白馬エリアのバックカントリー撮影の活動をしています。急斜面で滑る事が多いのでブーツのフィット感はかなり気にしています。僕の足は偏平足気味なのと、人よりカカトが後ろに出ていて靴ずれしやすいのでサーモインナーで自分の足型に成型できる事は素晴らしいことです。カカトはしっかりフィットさせてつま先は指がグーパーできるくらいの空間を作る事が自分がストレスなく滑るセッティングです。あとバネインソールとの組み合わせで偏平足の弱点が軽減できて疲れにくいと思います。17年ほどDEELUXEからサポートしていただいてますが、このインナー以外でのスノーボードは考えられません!普段、成型は所属ショップのVEXでやってます。
大磯勇樹
使用モデル: EMPIRE
サーモインナーは自分の足型にしっかり合ってくれるのでブーツの反応がいいです。普段はバックカントリーでの撮影が多いんですが、山を登るのも滑るのもけっこうブーツに負担がかかるんです。そういうハードな環境でも足にストレスがないので安心ですね。あとは、細かい微調整も可能なので少し足に空間を作ったり出来るのも魅力の一つだと思います。普段はムラサキスポーツで焼いたり、自分でも焼いています。
安永 楓
使用モデル: ID
だいたいシーズン中はストリートが9割、たまにゲレンデって感じで滑ってます。毎年サーモインナーがアップデートされていて、最近では焼かなくてもかなり調子良くなっていますね。もうスノーボードを始めた時から、長いことDELLUXEを履いてきていてサーモインナーの良さの虜になっているので他のブーツを履くのは考えられませんね。
安永 颯
使用モデル:ID
僕は普段はストリートの撮影をメインでやっていて、オフは室内で滑ってます。DEELUXEのサーモインナーは、かなりしっかりとした作りで肉厚な感じなところが気に入って使っています。今期からインナーが一新してさらにフィッティングが良くなりました。サーモインナーならではの抜群のフィット感もこのブーツを愛用している理由のひとつです。
佐藤亜耶
使用モデル: ID LARA
私はパークをメインで滑るので、ジャンプの着地やジブでの足のひねりなどを一日中繰り返します。新しいブーツをおろしたてでも、キッカーのシビアな抜けやジブのインに不安が少ないです。DEELUXEを使う前までは、必ずカカトやくるぶしが擦れたり、当たって痛くなっていました。私は足が小さいので、一般的な足首部分の広さだとカカトがすぐに浮いてしまっていました。しかし、サーモインナーにしてからはしっかり自分の足首の形に合ったインナーになるので痛くなることは全くありません。それに、私は足の指が自由に動かせない感覚が嫌いなので、成型するときにはつま先部分は実際の足より一回り大きく焼いてもらっています。指を曲げたり伸ばしたり、広げたり、本当に自由に動かすことができています。最近はショップのb’s eastさんで焼いていただいています。前に焼いたブーツのフィードバックや、次はどんな感覚に近づけたいかなど、細かく私の希望を聞いていただいているので、焼いてもらうたびに最高のブーツが出来上がっています。
中村陽子
使用モデル: EMPIRE LARA
滑りのフィールドというか、ゲレンデ、山と全てのフィールドでサーモインナーは欠かせません。私の足は、カカトの骨が出てたり左足だけ外反母趾だったりで、普通のブーツだと自分の足に合わなくて痛くなっちゃうんです。サーモインナーだと自分の足型にカスタムできるから、痛い場所に当たらないので調子良いですね。ピッタリ足に合うってことは、力を入れたときに板への反応が伝わりやすい。逆に、ゆるくてスペースがあると足裏の感覚もダイレクトにかえってこないのでオリジナルの足型は滑るうえでも重要です。成型はメーカーに行った時に焼いてもらってます。カカトはそのままで、つま先に大きめのパットをつけてます。左右で足のサイズも若干違うので、そんな微妙なのも合わせてもらってます。
山口 “34(Miyon) “ 美英
使用モデル: ID LARA
前はパークをメインに滑っていたんですが、ここ2年くらいでほぼストリートでの撮影をメインに活動しています。実は、私は外反母趾で他のブーツだと痛くなっちゃうんですよね。でもDEELUXEを履き始めてからはサーモインナーで足にフィットするように作ってもらっているので痛みは全くないです。足の形に特徴がある人もDEELUXEなら安心だと思います。成型はメーカーに行った時に焼いてもらっています。