カリフォルニア州ニューポートビーチで行われた「The Haakonsen Faktor Premiere」。そこにテリエの姿はなかったが、確かにテリエはいた。
The Haakonsen Faktor プレミア in カリフォルニア州ニューポートビーチ
エンドレス・サマー。決して夏が終わらない南カリフォルニア、ニューポートビーチ。そのすぐ近くで、10月1日、ボルコムの本社完成記念パーティが行われた。当日は約3千人のゲストが集まったわけだけれども、その大きな理由は、もう一つ他にあった。約3年ぶりとなる、スノーボード界のカリスマ、テリエ・ハーコンセンのシグネチャービデオ、”The Haakonsen Faktor”のプレミアが同時に行われたのだ。
当日は本人、テリエのほか、The Haakonsen Faktorに登場しているブライアン・イグチ、ショーン・ホワイト、ジェフ・アンダーソンらも姿を見せ、またテリエがスノーボードだけでなく、彼から様々なことを学んだ、とビデオの中でも告白している、伝説的なスノーボーダー、クレイグ・ケリーの姿もあった。
9時過ぎに始まったプレミアは、テリエのニュービデオを一目、誰よりも早く見ようというファンでごったがえし、始まる直前は収拾がつかないほどの状態だった。ビデオが始まった瞬間、一瞬の静寂が会場を覆い、ライディングシーンになると、一転会場は拍手、歓声に包まれ、また同時に”オオーッ”というテリエの信じられないようなトリックに低いため息さえもれた。
残念ながら、テリエのいわゆる舞台挨拶はなかった。テリエは最近、めったにマスコミの前に姿をあらわさない。インタビューもほとんど断っている状態だ。それだけにファンはテリエの登場を期待したのだが、それはかなわなかった。
それでも3年ぶりとなったシグネチャービデオはその日集まった3000人のファンを納得させるに十分の仕上がり。プロデューサー、デイブ・シオーネとのコンビによる、パート3を早くも多くのファンが期待したに違いない。
スノーボード界のカリスマとしてしられるテリエ・ハーコンセン。どんな雑誌やスポーツニュースも彼に関する事はすべて「世界一のスノーボーダー」で記事が始まる。そんなテリエは1974年10月11日ノルウェイにあるアモトという町に生まれる。彼の父親はホテルのシェフ、母親が特殊学校で先生をしていた。両親ともまったくスポーツには興味がなくテリエにスノーボードをさせる気も全く無かった。両親からのサポートがまったくなかったテリエは芝刈りやアルバイトでためたお金で13才の時に初めて自分のスノーボードを買う。
テリエのダイナミックで繊細な技術はもとより、彼の発言も注目を集める。オリンピック委員会会長のアントニオ・サマランチをアルカポネ呼ばわりしたり長野オリンピックをボイコットしたりと彼の行動には目が離せない。長野オリンピックの間も、ハラハラしながらテリエの情報を待っていた記者をよそ目に、サーフィンに行ったりアラスカへフィルムの撮影に行ったりなどオリンピックなどまるで気にしていなかった。「オリンピックに出場したとしても、自分の国のためになんか滑らない。もし優勝したとしても、一緒に祝うのはノルウェイ人じゃなくてフィンランドやカルフォルニアから来た友達ぐらいから。アメリカンライダーはオリンピック一色だけど、自分自身たいした事じゃないと思っているから。スポーツは楽しむものであって人から判断されるものではない」FREE SPRITを重視した彼の発言である。アメリカンスポーツテレビ局のESPNによると、2002年のソルトレイクシティーで開催されるオリンピックにもテリエは出場する気はないらしい。世界中のファンにとって悲しいながらもアッパレな知らせである。
テリエいわくオリンピックの状況さえ改善されれば、気が変わるかもしれないと言っている。
テリエいわくスノーボーディングは「自分自身になる事」「お金や政治や民族主義とは関係なく”バランス”そして”パウダーを友達と滑るようなもの”」。なによりも彼が一番重要(大切)だと思う事は「地形を読んでスムースに滑る事」。それぐらい、スノーボードしている時はいつも、スノーボードに入り込んでるらしい。つまり、回りの事など気にせず自分の世界に没頭しているわけだ。
テクニックにこだわるスノーボーダーにとっては、耳の痛いコメントだが自分自身を外界から切り離しフリーなる事がテリエのような新しくてシャープなテクニックを生み出す一番の近道なのかもしれない。
控えめだけれども人を引き付ける魅力があるテリエ。そのくせなかなか厳しい発言を繰り返す。長い手足にふさふさしたカールの黒髪。誰よりも高く飛び新しい技術を見せつけるライダー、テリエ・ハーコンセン。「あまりにも多くのコンテストに参加しすぎると想像力もやる気も熱望も無くしてしまう」と言うテリエ。十分休んでエネルギーをためて、これからも自由で挑戦的な滑りを見せてもらいたいものだ。
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