スノーボード創世記から、この日本でライダーと共にスノーボードを楽しむための小物にこだわり続けている人物がいる。SNOMANを主宰する増田 恒氏だ。父親の後を引き継いだ洋傘製造の仕事に携わるかたわらで始めたスノーボードアイテムの製造。製品をつくり始めてすでに25年以上、だが、彼には今も昔と変わらないモノづくりへの拘りがある。そんなブランドのビハインドストーリーを聞いてみた。
「SNOMAN」というブランドをスタートさせるきっかけは?
1980年代にスノーボード(当時はスノーサーフィンかな)というスポーツが、アメリカより日本に伝わり自分自身がその面白さに魅了されたんです。もともとスケートボーダーだった私は友人たちにも薦めまくり、周りの友人もスノーボードの面白さにはまっていきました。ところが当時はスノーボード用と銘打った商品はボードとバインディング(当時はゴムが一本張ってあるだけのものもありました)以外は入手できない。ウエア、グローブなどはスキー用を流用し、ブーツに関してはスノトレや寒冷地用長靴、冬山登山シューズなど、各々が考えるままに使用していました。その中でデッキパッドはサーフィン用やスケートボード用を流用するものが多かったんですが、サーフィン用はすぐに雪が固着し足が滑る、スケートボード用はグローブがすぐに破れるなど問題が多々ありました。そこで一日中スノーボードのことで頭がいっぱいな私は、何か良いものはないかと東急ハンズやホームセンターなどへ、使えそうなものはないかと日々駆け回りました。
そうしてついに戸当り部分などに張り付けるウレタン製の透明クッション材を見つけ、ボードに貼り付け気持ちよく滑ることができたのです。リフト待ちをしていると、スノーボーダーに出会う度に私のデッキパッドに興味を示し、絶賛してくれました。透明デッキパッド以外にも自分の頭の中にはこれがあったら絶対便利、快適というアイデアがたくさんありました。その中から、ダイヤルロックが付いたワイヤー入りウレタンカールコードのリーシュコード、首から下げるカラフルなプリントのリフト券入れ、それと透明デッキパッドの製品化をもって、より多くのスノーボーダーに快適をとどけるために1991年にSNOMANというブランドをスタートしました。
ブランドスタート時からの拘りは?
とにかく当時はスノーボード用の気の利いたアクセサリーが無く、あっても日本人のサイズに合わない、品質に問題がある、使い勝手が悪い、値段が高いなど使いたくない物ばかりでした。これなら日本人が日本人のために日本のゲレンデで使いやすいものを考えて作ったほうが良いよね、ということで作り始めました。製品作りの拘りは、とにかくすべてのスノーボーダーが滑る際に、SNOMANの製品があれば快適さがアップするものをと、ライダーの提案や意見を基に考え、作り続けていることですね。
長年のブランド展開のなかで、いちばん画期的な開発となったアイテムは?
ブランド当初の透明デッキパッド、ウレタンカールリーシュコード、腰からぶら下げリールを伸ばしてリフトパスを掲示するリフト券入れ『ノビール』などがありますが、中でも短期間に爆発的な数量を販売をしたのが、腰から下げるポーチの『チョークバッグ』です。ウエアポケットに入れたタバコがボロボロになる、あるいは携帯がかさばるなどの意見から、第三のポケットを作れないかと考え、ロッククライミング用のチョークを入れるポーチを元に、サイジングや取り付け方法など細かな部分を修正、変更して製品化しました。発売した時は「釣りのエサ入れみたい」などの酷評もいただきましたが、一度使うとその便利さとかわいさにひとりで何個も色違いを購入していただいたいう方もいらっしゃるくらいにヒットしました。当時はゲレンデを上から眺めると上級スノーボーダーの半分は、腰にブラブラさせながら滑っているのが見えたものです。ちょっと盛っているかもですが…(笑)
ザ・定番、ライダーにも絶対的に信頼を受けている
SNOMANのソックスとは?
発売からずっと人気のある定番商品とは?
隠れた名役者のハイソックスがあります。滑走時はブーツの中にあり目立ちませんが、SNOMANのソックスは、多くのデモやプロライダーが自分で選んで購入していただいているんです。ソックスはライダーとブーツをつなぐ重要なアイテム。ブーツの中で足がずれるとボードへのアクションが遅れたり、小さくなったりとライダーの滑りにマイナスの影響を与えます。さらに汗をかくと化学繊維やウールを多用したソックスは、内側で足がぬるっと動く傾向があります。SNOMANのソックスは天然素材であるコットンをメイン素材としているため、汗をソックスが吸収し、足がずれることを防ぐのです。またソックスの各部でそれぞれに編み方を変えることで機能性を加えています。コットン素材もドラロン糸という抗菌、速汗加工された素材を使用しているため快適に履き続けていただけるんです。さらに現在の製品はコンプレッション(加圧)仕上げにし、土踏まずからひざ下に向けて段階的に圧力を調整しているため、足がむくみにくく、疲れにくいソックスになっています。
SNOMANにおけるライダーの位置付けは? プロダクトにどのような影響を与えていますか?
ブランドスタート当初よりSNOMANのライダーは製品の提案者であり、テスターになります。今のスノーボーダーの求めているものは何か、製品の使い勝手は良いのか、改良箇所はあるのかなどをシーズンを通して活動してもらっています。また、SNOMANのライダーは製品の伝道師でもあります。機能性の多い製品は小さな写真ではその製品の良さすべてが伝わりません。そこで、実際にライダーがユーザーの前で使用して説明することで製品の良さを伝えてくれているのです。現在のSNOMANがあるのも今まで協力していただいた沢山のライダーのおかげであると感謝しています。
現在のSNOMANの契約ライダーはどんなメンバーですか?
今シーズンより川田隼風、武川 慎、橋本謙太、山本準也、渡部 亮の5名を加え、従来からのライダーの飯嶋 耕二郎、飯田桐子、稲川光伸、井原寛公、大森厚毅、小川 淳一郎、柏木 ゆかり、河野真吾、菊田 光司郎、木村明美、黒木 誠、小西隆文、佐野吉洋、清水大輝、清水寛之、末木利幸、末高俊樹、瀧 久美子、谷山亜矢、茶原 さおり、西澤孝征、浜 直哉、林 勇気、美谷島 慎、藤井耕司、堀 梢、堀之内 剛、増田塁輝、屋田翔太、吉田美和、米倉大介、渡辺智弘と合わせ総勢37名となります。
ライダーと共に自分たちならではの拘りのアイテムを作っていく
今後どんな方向でブランドを充実させていきたいですか?
今までは世の中にないものが多く、快適なスノーボードをというブランドコンセプトから、多種多様な製品を手掛けてきました。しかし、現在は各ジャンルの中で多くの専門ブランドができています。
良い製品を作るブランドがあればそのジャンルの製品はお任せしたいと思います。私たちは自分たちの特色を生かせるジャンルでよりニッチな専門にこだわった、日本での少量生産でしか作りきれない製品をライダーたちと共にしっかり作っていきたいと考えています。