高久智基 インタビュー

温厚で優しい受け答えの姿からは考えられないような彼の滑りは、多くのスノーボーダーを魅了している。流れるような滑りの中に垣間みるアグレッシブさ、そしてラインは彼にしか表現できないスタイルがある。
20年前からニセコをベースにしている今までの軌跡、そして代表をつとめるPowder Company GuideGENTEMSTICKからProモデルをリリースしている事など、いくつか興味深い話しを聞くことができた。

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Tomoki Takaku. He got respect from skier and snowboarder.

神奈川県(藤沢市)出身として、なぜ北海道をベースにされたのでしょうか?

今でこそニセコ、北海道、特にバックカントリーを滑りたいのであれば情報やメディアがあるので、そういう経路で人々が北海道に来たりする事がありますが、私が北海道に巡りあった時代には「そういう所でこのような滑りができる」という情報が全くありませんでした。
純粋に人との出会い、現場でたまたま知り合った友人がニセコに行っていて、たまたま玉井太朗さんの所に居て、玉井さんから「ずっと滑れるチャンスがあるよ」と紹介してもらいました。そのような経緯があって丁度20年前にニセコに向かったんです。

実はその前のシーズンは一年間カナダにいました。その当時、時間がゆっくり持てる環境にありましたのでスノーボードがしたい!と思ってカナダに行ったんですが、現地ではビザの問題とか就労、未来を考えさせられたりしました。
雪や風土や環境も悪くはなかったのですが、やはり海外に居たらわからない日本国内の良さをもっと知るべきなんだと実感しました。

なぜ北海道なのかというと「北の方が良いはず」「北海道は良いんだろうな」というイメージと、ニセコというのは昔からスキーヤーにも秘境として知られているような所だったので、パウダーを滑りに行くというか、日本の北でスキー場も良いコンディションということで行きました。
でも実はパウダーライディングとかではなく、フリースタイルをやりたくて行ったんです(笑)
とはいえ当時は常設のパークやハーフパイプも無い時代だったし、車も持っていませでしたが(笑)
そして自分がやりたいスノーボードと現実的に毎日繰り広げられる降雪量や見た事の無いような新雪の造形美、パウダーの深い雪があり、玉井さんやスノーボード界の大御所が目の前に居る状況でした。

しかしフリースタイルをやりたいという自分も捨てきれず、ワンメイク的なダウン系のジャンプとか力を入れてやっていた所、パウダーによる素晴しい造形をどのようなラインで滑っていくかという様な、当時のニセコヒラフのスーパーコースと言われていたコースで繰り広げられていた事が「これは実はもの凄いことなのではないか」と事を必然的に思ったわけです。
北海道をベースにして日本中の大会を回るよりも、前例はないけれど目の前で起こっているこの自然環境にどう合わせていくのか?というスノーボーディングを追求していく事に価値があるのではないか?という思いが、2,3年過ごした上で芽生えてきました。

そしてそこから20年程経った今、41歳でも結果変わらない事をやっている自分がいます。

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He has spent 20years in Niseko. Snow life goes on…..

高久さんの例年のシーズン中はどのような動きなのでしょうか?

例年で言うとシーズンスタートは大体9月頭のNew Zealandです。これは10日間ぐらいの足慣らし的な感じです。Powder Company Guideのリピーターのお客さん対象の「クラブ」というものをやっていまして、少人数で行くクラブ活動と称してNew Zealandのゲレンデ&ヘリボーディングを行います。

New Zealandから帰国して日本の冬の準備を始め、通常だとニセコのシーズンインは11月下旬からですが、立山のシーズンインと若干被るので、国内のシーズンインは立山でTHE NORTH FACEの主催するバックカントリーミーティング、それに合わせてPowder Company Guideでツアーを行っています。
そしてニセコに帰ると結構雪がある状況なのですが、スキー場のリフト営業は雪のコンディション次第なので、ハイクアップがスタートですね。まだベースができていないので中の雪がまだ柔らかくて板が滑らないんです。ですので通常だったらかなりスピードが出るコースを地形も確認しながらゲレンデの中をハイクアップしています。
この時期はまだお客さんも少ないので、ガイドやローカル、そしてPowder Company Guideのメインスタッフのトレーニングが始まります。

クリスマスぐらいから僕個人は様々なガイドや取材、メーカー等の動きが出てくるので3月頭までは忙しいですし、ニセコの繁忙期であり、ベストシーズンであるので常に時間が足りない感じです。先シーズンはずっとニセコに居ることができましたが、過去5年、そしてこれからの5年というものを考えた時に、移り変わるガイドの需要と受け入れ態勢が変わっていき、進化し続けていくと思っていますので、日本山岳ガイド協会に属していますが自分のスキルを高める一環として白馬に1ヶ月半居たり、研修というものを続けています。
JANのLevel1とかも受講する側になり、もっと知識を深めていくような事も欠かさずに行っています。

3月になると次第に落ち着いてくるので、試乗会と称した全国で行うGENTEMSTICKのイベントの数カ所のツアーに参加し、その後は毎年ではないですがこの10年程は3月の最終週にアラスカに向かう流れですね。アラスカではいくつかのツアーや撮影を分けて行います。なので滑る形もハイクアップだったりヘリアクセス、セスナで氷河に降りたりと様々です。日本以外ではアラスカが一番継続している場所ですね。

そこから帰国してニセコの春雪を楽しみ、GWに立山へ向かい、5月には週末に富士山に向かう形でシーズン終了となります。

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He owns Powder Company Guide. Situation in Niseko keeps changing, so he always learns and studies a lot.

代表としてガイド活動をされているPowder Company Guideとはどのようなものですか?

Powder Company Guideはガイド会社であり、まず第一に身の安全、スノーボードと雪山を通して最高な時間をお客様にご提案しようというものが基本です。しかしPowder Company Guideの特化した所はニセコというフィールド、そして私が模索しながら作り上げた「滑ってどう感じるのか」という所です。
Aという人とBという人がいた場合、スキルや滑る場所が全く違うわけですから、個々によっていつも上手くいかない滑りなのに今回は上手く滑れて楽しかった!と思える場合や、いつも上手く滑れる人が今回難しい所で転んで楽しくなかった、と思う場合などが考えられるわけです。
ですので忘れられないような1ターンをお客様と共有できるようなものでありたいと思っています。本日一番エクストリームな場所や一番高い山に連れて行って、「はい、じゃあ滑って下さい」では無いとPowder Company Guideは考えています。

ガイドは何名いるのでしょうか?

今リーダーガイドが私を含めて6名いますが、リーダーガイドは当時から殆ど変わらない人達です。Powder Company Guideを始めて15年ぐらい経つのですが1998年から複数人で行っています。レベル差があると別々のガイドがどうしても必要になります。
ニセコの特徴として高い山やエクストリームもあるのですが、やはり深い雪や林間コース、標高の低い山でも良いライディングができる可能性が高いので、滑り出しポイントまで辿り着ければお客様のニーズによってガイドがルートを選ぶ事が可能です。そのような理由からゲレンデメニューも人気の一つです。
ガイド=バックカントリーというのが通例かもしれませんが、Powder Company Guideではガイドの半分がインバウンダリーでビーコン無しのゲレンデで行われています。ゲレンデとゲレンデの間や朝一から滑り出す際に、何処から滑り始めてどのコースを選んで滑っていくのが最高のコンディションで一日を楽しむことができるのか、という内容のガイドメニューですね。

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He is taking lots of datas and checking. He knows risk and he wanna know more snow.

まるでゲレンデのコンシェルジェみたいなものですね

そうですね。朝から数本滑るうちに、お客様のレベルを判断し、細かい所までお客様のニーズに合わせて最高の一日を提供できるように心がけています。ガイドの料金は人数にもよりますが、大体8000円ぐらいからとなっています。
Powder Company Guideとして常に変化する環境やお客様のレベル、ニーズも考慮し、レベルアップを図る努力をしています。またニセコの現状と関係性、和というものを考えると今の6名のリーダーガイド以外でガイドが必要になった時に、外部から有名なガイドを引っ張ってくるということは考えられませんので、この4~5年は門下生を募集していました。
お金ではなくPowder Company Guideで働きたいという人にツアーに参加して勉強してもらい、ガイドの仕事を手伝ってもらったりしながらニセコで滑れる環境を整えてあげる、という形です。この門下生からリーダーガイドになった人もいます。ですので現在私を筆頭に年齢、レベルを含めて様々な世代がPowder Company Guideには在籍しています。

また、ガイドの特徴としてガイドレシオというものがありまして、場所にもよりますが4対1とか5対1とか大体そのような水準ですが、Powder Company Guideはほぼ2対1以上であればガイドが2名つきます。これは危険度というよりもお客様が滑った後に最高の思い出、今回ニセコを滑った時に「あの1ターン、あのライディング中の景色は良かったな!」という一瞬の忘れられない思い出を作って頂ける為に、リーダーガイドとテールガイドの2名をつけるようにしています。
リーダーガイドとテールガイドがいる事で、滑り出しで見えない場合でもしっかりとガイドして安心してドロップできるように、そして雪の安全、ライディングルートをリーダーガイドが確認してお客様の安全と最高のライディングルートを用意します。「高い所から何本滑ったよね、楽しかったでしょ?」というサービスだけが最高なのだとPowder Company Guide考えていません。

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Interview was great. realizing he focuses snow and snowboard. impressed.

自身のProモデルがGENTEMSTICKより「GT」、「BIG FLOATER」がリリースされていますが、その二本の特徴を教えて下さい

GENTEMSTICKはもう15年になるのですが、最初は少ないボードからで、無くしていくのではなくて増やしていくようなやり方です。最初に作ったのがBIG FLOATERで次がGTです。この間に2~3年の期間がありました。GTとBIG FLOATERは対局な板ですがBIG FLOATERは当時一番エッジコンタクトが長く、かつテールも割れていないので剛性も高いです。
当時日本人として一番勢いよくアラスカを滑るぜ!という意気込みがあった時に、アラスカの荒れているバーン、中急斜面でも走破性の高い板が欲しいというコンセプトで作りました。

ニセコの深い雪を気持ちよく滑り、雪を固体として考えるというよりは液体として考える滑り方で、新雪の表面とそれより下の見えていない世界があり、その世界の中で加速減速を繰り返しながら加速感、浮遊感を味わっていくというのがGENTEMSTICKの始まりであるTTモデルとかフラットキャンバーというものの原点かと思いますが、GTに関してはTTモデルを何処まで太くできるか?というコンセプトでもあります。
雪接長というものが圧倒的に短く、最大の特徴はサイドカーブの途中から最後の部分でロッカーのピークなんです。なので板のサイドカーブの最後付近を踏むとノーズがかなり浮きます。GENTEMSTICKの中でもテーパードがキツい板です。ですので見た目はかなりがっしりとした印象ですが、浮遊感と乗った感覚、スイングウエイトは非常に軽い板ですね。そして限界点が高い板ではありませんが、ニセコの気持ちよい深い雪で沈みながらも減速せずに浮き、ノーズが雪にくわれないで一段階高い所に当て込めるとても楽しい板です。

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Tomoki with GENTEMSTICK.

最後に

スノーボードを通して味わえる自然の造形美は、人が人生の中で味わいたいと思う事や人生自体を変えてしまう可能性もある素晴しいものであり、ある人にとっては人生で最高の一瞬を得る事もあるかもしれません。僕にはそのような事がありましたが、時としてその一瞬は逆に人生の取り返しのつかない事になる可能性もあり、その場合は家族や友人、様々な人が悲しむ事になります。

スノーボードは遊びだと思います。もちろん遊びの中でも人生観を変えてしまうような崇高なものであると思いますが、その範囲の中で楽しめれば日々の自分のレベルアップとまだ見た事の無い景色、それを融合させた時に味わえる感覚を得て、人生の張り合いになったりスノーボードもっと頑張ろうとか仕事頑張ろうとか、前向きな気持ちも生まれると思いますので、是非多く雪山に出向いてもらいたいな、と思います。

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with next generations and Taro Tamai(Right side). Great snowboarders.

近年のバックカントリーブームにおいて、市場や地域の活性化、今までとは違うスノーボードトのつきあい方など良い点もたくさん感じる部分も多いが、それとともに雪山の危険性、知識と経験不足から来る怪我や遭難などの危険な部分もしっかりと理解しながらの各自の判断と行動が今後さらに求められていくのではないだろうか。
スノーボードと雪山というものはやった事がある人にしかわからない魅了される「なにか」があり、それはもちろんフィールドはスタイルに縛られないものではあるが、今回はガイドというものの大事さという事を良く理解できたのではないだろうか?

ニセコ。久しく行っていないが、インタビューをしてますます訪れたいと思う場所となった。

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Interview and edit  by
Credit_Kazu