豪雪地帯の妙高をベースに活動している豊田貢。
豊田貢という名前で思う浮かぶのはスケートボードでは元全日本スケートボードチャンピシプ優勝者であり、SANTA CRUZからシグネチャーモデルをリリースしたり、全米プロアマオープンに出場ということやスノーボードでは元全日本ハーフパイプオーバーオールチャンピオンでもあり、元全日本ウインタースポーツ専門学校のヘッドコーチであり、今ではThe NorthfaceやTJ Brand snowboards, OAKLEYのサポートを受け、光ヶ原CATツアーのガイドや自ら立ち上げたStarting pointというプライベートレッスンを行っているマルチタレントでもあり、実はウクレレやギターをこよなく愛するやさしい一児の父親であるという事。
スノーボードは若い人達のみが楽しめるものでもなく、40才を過ぎたらできないわけではない。しかしプロフェッショナルとして活動を行いながら生活をしていく人達にとっては
「いつまでこのまま続けられるのか?」という思いを、少なからず殆どのプロスノーボーダーが一度は深く考える事でもある。
今回は「光があたるその一瞬だけ」の今をフィーチャーするわけではなくプロとしての活動を今もし続けている豊田貢のスノーボード、家庭、まだ若いスノーボーダー達へのアドバイスをメインにインタビューを行った。
豊田貢インタビューPart1はこちらから
4) 年を重ねて(スノーボーディングして)いく事がネガティブに考える人が多い中ポジティブになれるきっかけなどの出来事等があればその経験談から教えて下さい
良い質問だね!(笑) 現役だった頃の自分の実力は自分が一番知っているだけに やらなくなった、やれなくなった技ってたくさんあると思う。それは自分の年だったり怪我だったり身体的なものが理由ということもあると思うけど。
それは誰でもネガティブにもなるよね!だってできてた事ができなくなっちゃうんだから。普通の仕事だと習得した事は殆どずっとできると思うんだ。頭で理解している事だから。
でも身体で表現できてた事というのは年と共に恐怖心もでてくるし、自らやらなくなる、やれなくなる、やらないようにする、そこの線引きが非常に難しくなる。
その時に「前まではできてたのに」とも言いたくない。そういう意味で少しずつ現役から退いて行くっていう事は難しいんだよね。自分もわかっていたつもりだったけど、これほど難しい事はないんだなって実感したよ。
だから僕もネガティブになる部分もあるけれど、年を重ねる事によってコントロールできる様にもなってきたんだ。できないものはできないと言える様になれたのも大きいね。
例えば今一緒に仕事して、アグレッシブに滑っているライダー仲間がいるけど自分には逆に力の抜けた、良い方悪いかもしれないけど要所要所手を抜いた滑りができる様になったし、それが今の自分なんだと自分自身を理解できたのが逆に大きなきっかけだったかな。
自分の滑りをみて評価するのはみんなだし、今の自分は評価に対してのプライドも上手に捨てられる様になってきて、また新たに継続できる様になってきたね。
でも十年以上かかったと思うよ。悩んで詰まってこれでいいって自分を無理矢理落とし込む時もあったり悔しかった時もとても多かったしね。
5) 確かに十年前ぐらいには腰を痛めて1シーズンずっと滑れない事もあったりしましたよね
そんなこともあったね!
自分の表現する場が取られるという事程もどかしいものってないんだってその時理解したよ。だから思うんだ。人はそれぞれどんな場所でも自分を表現する場所があるはずだし、その場所は必要不可欠なんだ、ってね。
6) 上手い人でもまだ始めたばかりの人でもスノーボードをして感じる「楽しさ」は同じだと僕は考えています。でもやはり楽しむ為には最低限滑る為の知識と基礎とかが必要だと思いますが、これからスノーボードを始める人、もっと上手くなりたい人に対してアドバイスをお願いします
楽しいレベルって初心者だろうがプロであろうが、今映像を残している人とかでも同じ価値観だと思うんだ。ただ楽しいっていうのは「レベル」があるとも思ってる。
例えば3つしか技を持っていない人と30個技を持っている人とは楽しさの次元が違ってくる。その次元を、時にはストイックに練習して覚える時もあるだろうし、目線が変わってくるという「変化」が起こってくる。そうすると楽しさは同じだとしてもその瞬間瞬間の重みっていうのが変わってくるはずなんだ。
同じ場に居て同じ空のもとにいて楽しいっていうのももちろんある。だけど、ある斜面を滑るという事になった時、技術的なレベルが高い「楽しさ」っていうのはまた新たな楽しさの「発見」に繋がってくる。だからアドバイスとしてはやっぱり練習や努力や経験、知識などが色々あるといいよ、ってことかな。
7) 人の滑りを見ながら覚える、っていう事も大事だと思いますけど例えば週末の1日しか滑りにいけない人にはなかなかそういうチャンスも少ないです。またちょっと滑れるだけで「もうレッスンはいいや」と思う日本人が殆どですが、アメリカとかはどのようなスポーツでも初心者から上級者まで、レッスンやコーチングを受けたりする現状があります。
そうだね。特にスノーボードって教えられて上手くなるスポーツでもあると思うんだよね。僕とかプロスノーボーダーって時間とお金を労力を費やしてそういう環境を作ったんだけど。
上手い人の後ろを滑って、目で盗んで毛穴から染み込ませて自然に自分の物にしていく環境を作ったんだ。毎日言葉ではなく目で情報を入れたものを、自分で噛み砕いて表現していく事が一番スノーボードが上手くなる秘訣だけど仕事をしながら週末に滑る人、滑る事を楽しみにしている人はなかなかそういう環境を作っていく事が難しいよね。でもそういった部分ではレッスンというのはもの凄く近い道があると思う。
僕らがそういう場所に行って環境を作って培ってきたものを週に一回、月に一回でもレッスンを受けて少しでも知識なり技術なりを習得するというのは、僕はまた一つの方法だと思うし、
その人達の必要な「環境」だと感じてるんだ。
8)今までは学ぶって大事だなって思ってたんですけど、「教わる」っていうのも大事だと感じました。今まで先人達が大変な思いで手に入れた経験、知識というのも一回だけでも聞く事ができて、遠回りしなくても済むということは最終的にもその人達のプラスになるんではないかと思います。
自分もこのスノーボードというものは見て覚えるということがある中で、教わるっていう部分で自分も手助けできないか、と考えて妙高でバックカントリーの滑り方、フリーライディングの滑り方を教えるレッスン、Starting pointをいう事をやっているんだ。
どんなレベルでもそこからリスタートとして新たなステージとしてレベルを上げるみんなの「環境」を提供する為に、関温泉でバックカントリーライディング、プライベートレッスンをやっているんだけど、おかげさまで的を得ているみたいで多くの問い合わせを受けているんだ。
「今更ライディングのレッスンを受けるのは恥ずかしい」と思う人もプライベートレッスンで気楽に参加できるようにしているせいか、団体もいるんだけどマンツーマンで教える事も増えてきているね。
レッスンの中では本人のライディングの良い部分を見つけながらも足りていない部分をレッスンの2時間でしっかり教えているんだ。レッスン内容は時には厳しいときもあるかと思うんだけどその人のレベルを引き上げる為に最大限の事をしているよ。だからもし技術面でも、そして心の面でもスノーボードに壁を感じて、でもさらに楽しみたい、新たな発見をしたいと思う人は是非参加して欲しいと思う。
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