友達と楽しく滑っている時、気がつけばゴーグルが曇り、凹凸が分からず転んでしまったり、見えなくて楽しく滑れないという経験をした人はほとんどではないだろうか?
実はゴーグルのレンズはケアすることにより寿命を延ばし、快適な視野を確保でき、一日中楽しく滑る事ができるのだ。
今回は1965年よりゴーグルを作り続けているSMITH OPTICSの山田さんに直接「楽しく滑る&長持ちするレンズケア」について語ってもらった。
①前回はゴーグル選びのコツをお聞きしましたが、今回は滑る上でとても大事なレンズについてお聞きしたいと思います。まずそもそもなぜレンズのケアが必要なのでしょうか?
レンズのケアは皆さんが一日中山を滑る時に途中で曇ってしまったり、目が疲れてしまったりすることをなるべく軽減する為に必要になります。レンズのケアをしていないものだと一回使ったものが次の日に使う時にすぐ曇ってしまって使い物にならないとか、レンズの傷で見えにくくなって目が疲れてしまうといったところで、直接皆さんの滑走という部分で密接に関わってきます。
レンズのケアは使用したものを必ず乾かす、という意味では毎回必要になってきます
またゴーグル1個につきレンズを2枚や複数枚持っているユーザーさんで、山に持っていきたいという人が居れば、ゴーグルに付属する柔らかい布の袋に入れて持ち運んだりすることが重要になります。
②レンズのケアの内容についてお聞きします。まずレンズの洗い方はどのようにすれば良いでしょうか?
他社さんのレンズの場合はそれぞれありますので一概にはいえませんし、ユーザーさんで使用しているメーカーのサイト等で必ず確認して頂く必要があります。SMITHのレンズに関しては、ベーパレーターレンズは水で丸洗いができます。シリコン圧着であるベーパレーターレンズはそのまま蛇口の水で洗い流して頂き、柔らかいクロスで優しく拭く(押しながら水分を取る)だけです。その後にしっかりと乾燥させて下さい。
基本レンズが曇る理由は汚れや傷が原因です。
SMITHのレンズは内側のレンズの表面に目に見えない細かいスリット(溝)が入っていて、表面積を大きくし、ゴーグル内の水分を結露する前に吸収する効果があります。それが曇り止めの役割をしますので、溝が汚れで詰まってしまうと曇りを抑える為の水分を吸収する面積が小さくなってしまいます。
レンズを洗う、綺麗にするのは新品のレンズの場合、シーズン中使用している事を想定すると春前に一度綺麗にする事が望ましいです。洗う頻度は1シーズン1回か2回で充分です。
外側と内側のレンズをスポンジで接着してあるレンズの場合、丸洗いすると内側に水分が入ってしまう可能性があるので、霧吹き等で軽く濡らしてから優しく押しながら拭き取る事をお勧めします。
レンズを洗う場合は冷たい水かぬるま湯が良いと思います。
ちなみに洗うと曇り止め機能が劣化するのではないか?と思われるユーザーさんもいるかと思いますが、SMITHの場合にはレンズの中に含浸(がんしん=レンズの素材に曇り止め素材を直接混ぜ込んで作られている事)させているので、機能的には半永久的に曇り止め効果が持続します。
また雪山で転んだ時に、レンズの内側を拭く様にしてしまうとその見えない溝にすべて水分が入ってしまうので、できるだけ柔らかい布などで押しながら水分を吸収する事をお勧めします。テッシュや紙ナプキンは傷がついたりするのでお勧めしません。そのようなシチュエーションの為に、SMITHでは水分を拭き取るスノーイレーサーも販売しています。
③滑り終わってからの保管の仕方についてお聞かせ下さい
よく滑り終わった後に車に置きっぱなしのユーザーさんがいますが、レンズを曇らせたくないと思っているのであれば、まず部屋まで持ち帰りましょう。そしてレンズをゴーグルから外して保管して下さい。じつは「曇って困る」というユーザーさんの殆どが滑った後にそのままで放置しているか、湿ったゴーグルケースの中にそのまま入れて放置するユーザーさんです。湿ったままで保管するのは逆効果ですし、実はゴーグルとレンズの間の水分はそのままにすると、なかなか蒸発しません。
しばらく滑りに行かない、というユーザーさんはゴーグルからレンズを取り外して、乾燥剤(シリカゲル)を使用するとよいと思います。お菓子に入っている乾燥剤でも良いですし、100均等で売られているものでも大丈夫です。それをゴーグルケースや密閉していない箱でもいいので一緒にして保管して下さい。SMITHのゴーグルケースの場合は一部がメッシュになっているので、ケース内に湿気がとどまることはありませんし、その中に乾燥剤を入れておくのがベストだと思います。
④もし山でレンズが曇ってしまったときはどのように対処すれば良いでしょうか?
場所にもよりますが、ダブルレンズの内側が曇ってしまった場合、その場所で対処する事はほぼ不可能だと思います。しかしレンズの内側が曇った場合、先程説明させて頂いた方法で水分を取るか、最近はレストハウスでドライヤーを置いてある事が多いので、暖めすぎない様にして乾燥させてあげる事もお勧めです。
しかし一番お勧めなのは、滑走レベルは関係なく、常にスペアレンズを用意しておくことです。
⑤1965年からゴーグルを作り続けているSMITHさんのレンズの特徴を教えて下さい
SMITHは実は1965年からの歴史があり、アンチ・フォグという面では曇り止め素材を直接レンズの素材に含浸(練り込む)して作られているのが特徴です。
正しい使い方をしていれば半永久的に効果は持続しますが、レンズ自体の経年変化もありますのでそちらを考慮する必要があります。
日本国内の正規販売店で販売されるゴーグルはキッズゴーグルを除いてすべてJAPANフィットで、鼻の部分のフォームの形が違いますのでしっかりと顔にフィットします。
レンズの種類も様々なコンディションにあわせて取り揃えています。SMITHはレンズの透過率を基準としています。皆さんそれぞれ目の色が違ったりして一概にどのレンズが一番か、という事はわかりませんが、レンズが一つしか無い場合は透過率55%のレッドセンサーミラーが一番オールマイティで見えやすいと思います。豪雪であるニセコ、パウダーカンパニーのガイドの皆さんはシーズン中はこのレンズが一番見やすいというフィードバックを頂いています。これでも暗い場合はイエローセンサーミラーだとナイターまで見えやすいレンズです。
またSMITHのレンズはウレタンで2枚のレンズを圧着しているモデルより、シリコン密着のベーパレータレンズは5倍曇りにくいという結果が出ています。もちろんウレタンで圧着しているモデルでもかなり曇りにくいレンズになっています。
⑥今年のSMITHさんのお勧めゴーグルは?
今年は究極にシンプルなシステムと機能を持った新世代のI/O 7をリリースしました。ヘルメットの外につけたり内につけたりするニーズにも応えてストラップが上下にも動く機能や、スペアレンズも付属していて、スペアレンズ用のレンズケースも付属しています。
あとはWOMENS用で眼鏡をつけながら滑れるSHOWCASE OTGやSMITHが再提案する最新のフラットレンズモデルであるSQUADもリリースしました。
ワイドな視野性をもちつつ上級モデルの球面レンズのVICEと実は同じフレームなので、気分に応じて球面レンズをつける事も可能になります。逆にVICEにSQUADのフラットレンズを装着できます。
レンズのケアといえば濡れたら拭くだけ、滑ったらそのまま忘れて放置、というユーザーも意外と多いかもしれないが、直接的に滑走に密接に関わる部分だけに、楽しく滑りたい、上手くなりたいと思うユーザーは是非レンズのケアを行ってみては如何だろうか?
またレンズのクオリティ、視野性、フレームの種類の多さで様々な提案をしているSMITHのゴーグルを是非実際の店舗で試してみる事をお勧めする。
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