トゥ抜けとヒール抜け。

今日は溝の口に毎日のように来ている方にヒール抜けフロントスピンを教えさせていただきました。

決してガラ空きのSNOVAで練習日和なのに新品のブーツを降ろし、上手く滑れないフラストレーションのはけ口として名コーチになった風な感覚を味わい、気分よくなりたかったわけじゃ、な、ないんだからね!!ね!!!

ともかく大体普通に滑れる人なら男女問わず30分くらいでフロント180をスムーズに回して立てるくらいまでなら教えられます。

で、今日は対象が女性だったわけなのですが、いつもまず最初にいままでやっていた180を見せてもらいます。

この時、女性の場合は7〜8割、ライン取りを間違えています。で、上手く回りません。
男性の場合は同じ事が多いのですが、何とか回る人も多いです。

この時にどう間違っているかと言うと、フロントスピンの時にある二つの抜け方
「ヒール抜き」

「トゥ抜き」
の抜き方、ライン取りがあべこべになっているのです。

まずはそれぞれの特徴。
「ヒール抜き」
・バックサイドターン(かかとのエッジを使って回るターン)を利用。
・回転方向に沿っている為回りやすい
・回りやすいのであまり力を使わない
・かかと寄りでオーリーをかけるため、蹴りづらい
・コークスクリュー軸、アンダーフリップ軸に派生が可能

「トゥ抜き」
・フロントサイドターン(つま先のエッジでのターン)を利用
・回転方向と逆のターンを利用するため回りづらい
・ので、力を使う
・つま先でオーリーをかけるので蹴りやすい
・ロデオ軸、シケイン軸に派生が可能

で、ジャンプやスピンをやる前は当然フリーラン、特にカービングターンのスキルが高い方が習得速度が速いです。
しかしながらスピン初心者がフリーランの超上級者である可能性というのも極めて低い可能性なので、大体の人が「問題なくターンが出来る」というレベルです。

で、ここで出てくるのが男女の筋力差。
男はトゥはどこまでも力任せに踏みやすいし、ヒール側だってそこそこ板は踏めます。
しかし、女性は本当にヒールサイドのターンが苦手な人が多いのです。

これは、つま先の方が当然使える関節、筋肉数が多く、かかとはほとんど頸骨の末端までしか使えないからです。つまり足首から下は手持ち無沙汰状態になる人が多いのです。

なのでただでさえ踏みづらいかかと。
どうやって踏むようにするかと言うと、体のポジショニングや体全体の力を使うようになります。

そこで上記の色々な要素が重なり、かかとでターンしながらアプローチラインを滑走し、なおかつジャンプにつなげると言った芸当が多くの女性の筋力ではとてもやりにくいのです。

だからよくあるのがフロントスピンのラインは踏みやすいつま先で踏んでいる=トゥ抜けのラインになりやすい、ということなのです。

さらに最初に挙げたスピンの特色をご覧下さい。
トゥ抜きは力を使います。踏みやすいからと言ってトゥ抜きの180をやっているスピン初心者の女性、ほとんど板を引きつけてグラブ出来るような人はいません。

これは板の進む方向と逆方向に体をねじって抜けると言うトゥ抜きの特色が出ていて、懐を作ったまま回れる人(上半身、下半身をロックさせてまわれる人)が非常に少ないのです。

なので踏みやすいから、と、180をやってみたものの、それ以降の360や540がとても遠くなってしまうのです。

つまり何がいいたいかと言うと、
「くるくる回れるようになりたいなら女性はヒール抜けにしておいた方が後々良いですよ」
という事。

しかしトゥ抜けはその力強い抜けの雰囲気から、
「カッコいい」
と考えている人が多いのも確かです。

だから男性は筋力差的な事で、どちらを覚えても良いと思います。どちらも出来るのが一番ですが。

ただヒール抜けはトゥ抜けよりも新しい時代の抜け方で、地形や滑走者の筋力、回りやすさなどを考えると利便性が高いです。
ヒール抜けでしっかり蹴れるようになれば本物だと思います。

しかし、わたくし、熱心なファンの方はご存知でしょうが、スイッチのフロントスピンはトゥ抜けなのです。(レギュラーはヒール)
これは、踏みづらいスイッチのスピンでヒール抜けにありやすい「早抜け」にならないように、そしてスイッチスピンでもしっかり高さが出せるように、と思ってスイッチ側をトゥスピンで習得するようにしました。

なので、男性は女性にスピンを教える時に上記の事、つまり筋力差は男性側が思っている以上にある、という事を理解して教えてあげた方が良いと思います。

男性が両足板をはいて平地をパタパタ歩くやつ。ああいうちょっとした動きも女性の筋力では一苦労なのです。

なので良いコーチングが出来る人は、いかに教えている人の体の動かし方や滑り方を理解し、より良い方向にもっていけるかがわかる人だと思います。

で、もう一個。
大事なのが、スピンに沿った正しいライン取り。

スピン中級者になると必ず通るのが
「真っ直ぐ抜けるほど偉い」
です。
これは当たってます。
でも、はき違える人もいます。

決してスピンは
「真っ直ぐ抜ける」=「真っ直ぐアプローチする」
ではないのです。

スピンをするにはどうしてもカービングの慣性が必要です。
正しいライン取りをして、抜ける瞬間に板が真っ直ぐ抜けるようにライン取りをする。
それが真っ直ぐ抜ける事なのです。

板をどフラットにして直下って、全力で体振り回しても多分ほとんど回りません。
限りなくフラットに近い状態でも、状態のポジショニングや回旋によりわずかながらライン取りの動作がある事が必須だと思います。

こういった事を考え、組み合わせる事でとても効率的にスピンというものを習得する方法がいくつもあります。
わたくしはまずは回して立つところから覚えてもらい、その横方向へ回す体の動かし方(スピン)に慣れたら次に縦方向の動かし方(オーリー)を取り入れてスピンを完成に近づけてもらいます。

最初から縦横の動きを複合させる事はスピンをこれから始める人にとってはとても難しい事だと思うからです。

これら全てが全員に当てはまるかと言うと疑問ですが、かなり多くの人に当てはめられると思います。
オフシーズンに定期的におこない続けてきたレッスンなどで確認済みです。

なので
「今シーズンは、いっちょ回したるでー」
ともくろむ方、また、それを教える方のご参考に少しでもなれば、さらに結果出来るようになり、みんなでお祝いが出来るようになればいいな、と思います。

あと、男性は、女性は、と書いてきましたが、これはあくまでもスノーボードをする時にどうしても遭遇してしまう性別特有の筋力を思い、習得への近道を真剣に考えて書かせてもらいました。